利便性やSDGsを意識した施策を

 パビリオンや催し物のアイデア以外では「自宅周辺から会場まで空飛ぶクルマで無償送迎してくれたら最高」(大阪府・69歳・男性)、「待ち時間を少なくしたり、移動が楽になったりする施策が必要。混雑状況のリアルタイム発信もしてほしい」(東京都・60歳・男性)など“利便性”に着目したものも多い。

「万博の開催国は持続可能な開発目標(SDGs)を意識しなければなりません。例えば、超高齢社会の日本で開催するなら、バリアフリーな会場づくりが求められます。若い人が多く訪れた'70年大阪万博の感覚を引きずったまま会場づくりをしてしまうと、世界各国から批判を浴びるリスクもありますね」(小野さん)

 また、会場については辛酸さんからも「象徴的なモニュメントがあると盛り上がるのでは」との案が挙がった。

「'70年の万博は、岡本太郎さんの『太陽の塔』が名実共にシンボルになっていますよね。当時の開催期間中、太陽の塔の目玉部分に男が籠城し、万博中止を訴えるアイジャック事件も発生したそうです。太陽の塔のように、事件が起きてしまうほどパワーのあるモニュメントがあれば『あれを生で見たい』と考える人も増えるのではないでしょうか」

大いに盛り上がった'70年の大阪万博を象徴する太陽の塔 
大いに盛り上がった'70年の大阪万博を象徴する太陽の塔 
【写真】過去に日本で開催された万博の一覧

 “見どころのなさ”も、来年の万博がイマイチ盛り上がらない要因なのかもしれない。

「いろいろと言いましたが、私自身は来年の万博に行くと思います。万博に行かず、そのまま閉幕したときに『大阪の万博に行かなかったな……』と、後悔しそうな予感がします(笑)。なにより、世界中のパビリオンを見れば、各国の経済状況や日本の国力もひと目でわかりそう。日本のパビリオンには侘寂感があるかもしれませんが、それも思い出になるので、やっぱり行きたいですね」(辛酸さん)

 どんな結果になろうとも、後悔したくない人は足を運ぶのが吉?

 ここまでさまざまな集客アイデアを紹介してきたが、小野さんは「“万博の成功の定義”は、集客だけではない」と語る。

「今回の万博の想定入場者数は約2800万人です。たしかに、日本のメディア報道を見ていると批判が多く、集客に苦労しそうな印象があります。とはいえ、大阪・関西という国内外の観光客が数多く訪れるエリアでの開催なので、その流れで目標人数は達成する可能性は高いでしょう。しかし、後世に残る万博にするには、目先の利益だけでなく“中長期的な成功”が欠かせません。

 例えば、万博をきっかけに国内外の企業が出会い、大きなビジネスをスタートさせたり、開催に関わっている名門大学の研究や技術を世界に向けて発信したりできれば、国の未来につながります。将来への“種まき”として機能するか否かが、万博成功のカギですね」

 開催期間だけが万博ではない。長い目で温かく見守るのも、私たちの役目なのかもしれない。

※インターネットアンケートサイト「Freeasy」にて6月下旬、全国の18歳以上70歳以下の男女500人を対象に実施

小野裕介●ロンドン大学卒業後、野村総合研究所を経て三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)に入社。主に東証上場企業向けにアジア・アメリカ市場参入コンサルティングに従事。現在は株式会社iaで代表を務める
辛酸なめ子●1974年東京生まれ。漫画家、イラストレーター、コラムニストとして活躍。興味対象はセレブ、芸能人、精神世界、開運、風変わりなイベントなど。鋭い観察眼と妄想力で女の煩悩を全方位に網羅する画文で人気を博す。『新・人間関係のルール』など著書多数

取材・文/とみたまゆり