「調子に乗っていた」

 長江さん、山口さん、西山浩司さん(ワルオ)からなる「イモ欽トリオ」は、『ハイスクールララバイ』の大ヒットもあって、一躍“時の人”となった。

「実は、僕たちは歌手ではないという理由から、賞レースはすべて辞退しているんです。歌番組も、『夜のヒットスタジオ』と『ザ・ベストテン』に出たくらい。よく3人で、『紅白に出たかったよね』なんて話すんですけど、大みそかに裏番組を担当していた大将ですから出演できるはずがない(苦笑)。もっと自分の可能性を試したかったという気持ちもあって、番組を降板し、イモ欽トリオも脱退したんです」

 表向きは学業に専念するという理由だった。だが、しばらくして大阪をメインに芸能活動を再開。事の経緯を伝えなかったため、不義理を働いたと見なされた長江さんは、萩本さんから「破門」を言い渡された。ファミリーでも異端の存在だ。

「調子に乗っていたんですよね。ただ、後ろめたさもありましたから、自分は欽ちゃんファミリーに参加する資格はないと思っていましたし、関連するような話も一切話さないようにしていました」

インタビューに応じた長江健次さん 撮影/矢島泰輔
インタビューに応じた長江健次さん 撮影/矢島泰輔
【写真】一世を風靡した「イモ欽トリオ」の大ヒット曲ジャケット

 萩本さんとの和解は、番組降板から20年以上たってから。「なんだかんだ言って、自分のことを気にかけてくれているような気はします」。家出したやんちゃ坊主ほど、親は気になって仕方がないのかもしれない。

「現在、僕は全国のライブハウスを中心に音楽活動をしていますが、すべて自分で手配して、出演者の交渉も行っています。音楽に加えて、トークも楽しんでもらえるように構成も考えています。自分でやってみて、あのとき大将が言いたかったことの意味がわかるんです。フリがあってオチがあるから、前に出ればいいというものではない。1+1が2とは限らなくて、現場の空気次第で1・5や2・5になる。答えは自分で考えろということ。大将から教わったものが今に生きていると、最近は強く思うようになりました」

 ライブでは、定期的にイモ欽トリオを結成し、『ハイスクールララバイ』も歌う。

「『目が汚れてる』んじゃなくて、こっちもさまざまなものを見て、しぶとく生き残ってきたという自負もありますから(笑)。いろいろな人に助けてもらって、今があります。繰り返しやり続ける。その意味が今はわかります」


取材・文/我妻弘崇