意思疎通はできないといわれたが、感情はある
リンちゃんは全前脳胞症の中でも最重症のアローバー型。唇が真ん中で割れた口唇裂で、鼻の穴はひとつだけで鼻骨もない。だが、意思疎通はできないといわれていたが喜怒哀楽の表情ははっきり見てとれる。心配された染色体の異常もなく、4か月の入院生活を経て自宅での医療的ケアが始まった。
「胃ろうの手術を行ったので、今は1日4回食事注入をしています。この病気はけいれんがよく起こるので、日に4回抗てんかん薬の投薬も行います。けいれんや発作が起こると痰や唾液も出るので、吸引器で吸うのもケアのひとつ。モニターで呼吸の数値を常に確認し、夜には経鼻酸素をつけます」(nikkoさん)
さらに、汗がかけず身体の熱がこもりやすいので、体温調節は一番気にかけているという。
「体温が上がるほど発作も強まるので、いかに早く身体を冷やしてあげられるかが大切。保冷剤を敷いたり、霧吹きで身体を濡らして扇風機にあてたりと、時間や体力を使いますね。頓服薬を使う時もあるのですが、肝機能の数値も気になるので頻繁には使いたくなくて。寝る時は逆に体温が35℃台まで下がるので、夏でも毛布でくるんであげないといけないんです」(ゲンさん)
現在は月1回の検診に加え、口唇裂を治す手術に向けて、2~3週間に1度口腔外科の病院へ通っている。日常的なケアや手術は、国の制度に助けられているという。
「全前脳胞症は小児慢性特定疾病に指定されているので、検診や手術には助成金があり、口唇裂の手術も適用内だろうといわれています。酸素濃縮器とモニターはレンタル、ガーゼやカテーテル、シリンジなどの医療ケア用品は病院から支給してもらえます」(nikkoさん)
だが将来のことは想像がつかないというのが本音だ。
「先のことは幸せな悩みなので考えられないです。でも成長すると体重も増えるので、ケアを行う私の体力にも限界があるという不安はあって。入浴介助用具や車を福祉車両に改造したりなど今後必要になるはずで、費用面の不安もあります。仕事復帰はまだ考えられませんが、安心できる預け先があればいいなと思いますね」(nikkoさん)