「結婚式……来れますか? 無理しないで、普段の格好で全っ然いいからね。どうせスーツとか持ってないでしょ」
妹からの結婚報告。バンドマンの兄は6畳ひと間のような古めかしいアパートでそれを聞く。カーテンレールには安そうでカジュアルな服が干されている。後日、バンドマンらしい長髪を短く整え、そしてヒゲを剃る兄。部屋のカーテンレールには真新しいスーツが掛けられている……。
式当日、親族控室を訪れる兄。純白のドレスに身を包んだ花嫁(妹)は短髪かつスーツ姿の兄に「似合ってないけどカッコいい」と涙声で感謝を伝える。感慨深そうな兄。そこで流れるナレーション。
「はっじめての! アコム」
「消費者金融の借金を美談にするな」
9月12日より公開されている消費者金融大手『アコム』のCMだ。《人々の大切な瞬間に寄り添いたい。 そんな想いを「いま、大切なことのために。」というCMコンセプトに込めて、 新CMシリーズ「Acom Stories」を制作しました》、だそうである(YouTubeアコム公式チャンネルより)。
「直接的に描かれたわけではないですが、バンドマンの兄は妹の結婚式のために着るスーツがなく、アコムでお金を借りて出席した、というストーリー。妻のために大切な物を質に入れて……という昔話がありますが、そうではなく。また、必死にバイトをしてお金を捻出したわけでもない。消費者金融各社は24時間いつでも、無人の端末でお金を借りられることを売りにしていますから、兄は“指先ポチッ”だけでお金を得られる、最もたやすい手段で妹のお祝いにやってきたとも考えられますね」(広告代理店関係者、以下同)
ゆったりとしたBGM。照れながら感動している面持ちの兄、そして妹。CMは終始、“イイ話”な雰囲気が漂う。しかし、これはイイ話なのか……。SNS等で、このCMに対する懐疑的・否定的な意見が多数上がっている。
《妹の結婚式に出るために消費者金融で借金するのを美談っぽいCMにするな》
《このCM見た時ゾッとしました 兄としても情けないし涙出るわ…》
「今どきスーツなんて1万円台で買えます。その金額すら……なのでしょうか。きょうだいという親族、かつ社会人ならご祝儀も友人や知人による一般的な3万円以上出したいところですが、それも、でしょうか。スーツを手に入れた兄は、親族控室で妹に対し、“あんま見るなよ”と照れくさそうに話します。そこで“利息”の説明が入る。利息については……あんま見るなよ、とは深読みのしすぎでしょうか(苦笑)」(前出・広告代理店関係者)
結婚式の日取りは数か月前から決まっているはず。親族であれば、なおさら知るのは早い。式直前と思われるこのご利用は計画的でもなければ、スーツ代を消費者金融で借りて出席とあれば、そこに愛はある……んか?