実例2:親の借金の肩代わりを隠す夫に、不信感を覚えた妻
夫(29歳)には結婚前から、妻(26歳)が知らされていなかった親の借金があった。そのことを後から知らされた妻は、夫に対して不信感を抱くようになったという。
「話してもらいたい妻と、その必要性を理解できない夫のそれぞれに言い分があり、そこに結婚観や夫婦間の違いがくっきりと表れていました」
夫に話してもらいたい妻は、知ることで夫を理解したいと思っている。そこには夫に対する愛情がにじみ出ているが、一方の夫は、親の借金のことを話すのは恥ずかしいと感じ、また妻に心配をかけさせたくないと思っていた。しかも結婚前のことなので、わざわざ話すこともないというのだ。
「互いの本音を聞くと、彼女が抱えていたのは“私を信頼していない”という寂しさでした。“信頼”が彼女にとっては“愛”を示す方法だったのかもしれません」
そこでまず、安東氏は、夫には「妻に甘える」ことをすすめた。夫は躊躇(ちゅうちょ)したが、そのことによって妻が納得してくれるとわかり、妻に「親の借金の肩代わりを、家計から出させてください」とお願いすると、夫婦の関係に変化が表れた。
「彼のほうは夫婦だからと、頼るのはよくないと考えていたようです。でも“そのことで君が寂しさを感じていたならごめんなさい”と謝ってくれたことで、彼女も少し気持ちが晴れたようです」
夫婦間の価値観の違いがカウンセラーによって、解きほぐされていく。解決の糸口となったのは、妻の夫への愛情。それを見抜いたことも解決につながったといえるだろう。