2020年にがんを宣告されたお笑いコンビ「ペナルティ」のワッキー。仕事もプライベートも充実、働き盛りのときに突然襲ってきた病魔をどう乗り越え、治療に臨んだのか。今も後遺症が残っているというワッキーに、当時の闘病生活や現在の状況を聞いた。
「喉の左側にしこりを見つけまして。放っておいたらそれが1週間で2個に増えていて、これはおかしいと」
ヨーグルトは泥を食べている感覚
そう話すのは2020年の春に中咽頭がんを患った、お笑いコンビ・ペナルティのワッキーさん。スポーツマンで知られており、健康にも気を使っていた。しかし大学病院の医師から告げられたのは、まさかのがん。それも当初は原発不明がんだった。
「首のしこりはがんなんですけど、お店で例えるならそれは支店で、がんの本店である“原発”が見つからない。喉の奥の組織を調べたり、PET検査もして1か月ほどかけてもわからず、原発不明がんと診断されました」
妻と相談し、セカンドオピニオンを受けることに。
「主治医の先生はとても協力的で、すぐにがん専門病院の先生を紹介してくれたんです。ただそこでも原発が見つからず、首の組織を切除するしかないと。手術の日取りも決まったのですが、術前の最後の診察で、先生が“何かここが気になるんだよな……”と人さし指で喉の奥をぐりぐり触るんですよ。
もう一度だけ検査しようと喉の深くまでえぐり取り、そこでやっと中咽頭がんが見つかりました。最新の医療技術でもわからなかったことを、先生の経験や勘、愛情でギリギリのタイミングで見つけてくれてすごいと思ったし、紹介してくれた大学病院の主治医にも、すべてのめぐり合わせに感謝しましたね」
ワッキーさんが患った中咽頭がんは、化学放射線療法と相性が良かった。そのため切除手術は選択せず、抗がん剤治療を3回と放射線治療を30数回行うため、6月から2か月の入院生活。そして化学放射線療法の副作用が徐々に身体を蝕んでいく。
「何を食べても良かったので、お気に入りのみそラーメンをよく食べていたんです。でも10日ほど過ぎたころ、急に味がわからなくなって。ヨーグルトなんて泥を食べている感覚で、そのうち気分も落ち込んで……。放射線を浴びると喉が痛くなり、ごはんも食べられなくなりました」