本の山に積もる家族の歴史
小川 しまおさんの場合はお祖父様が島尾敏雄さん。『死の棘』で有名な小説家でいらっしゃいます。『死の棘』で忘れてはならないのが、お祖母様のミホさん。
石井 ミホさんの『海辺の生と死』(中公文庫)という本が私は好きなんですよね。生まれ育った奄美を舞台にした短編集です。終戦直前、敏雄さんが特攻隊長として出撃することになったときの話も入っています。しまおさんの家にもありましたが。
小川 まほさんはこの2人のお孫さんに当たるわけですよね。びっくりしたのはほかならぬお祖父様が書いた日本文学史上の名作である『死の棘』を積んどくっていう(笑)。
石井 そうそう(笑)。インタビューの中でおっしゃっていた、まほさんが出てくる島尾敏雄の小説を読んだんですよ。講談社文芸文庫の『夢屑』に入っている「マホを辿って」っていう作品です。2歳のころのまほさんの言葉を録音して、それを敏雄さんとミホさんが一緒にずっと聞いて、覚えるくらいになるっていう話。幼い子どもの口調がいきいきと再現されていて、とても良い短編だったんです。積ん読の取材をきっかけに、これまで知らなかったおもしろい作品に巡り会えたりするのも、すごく楽しかったですね。
小川 継承するものはありつつ、全部は継承しなくていいってことですよね。おじい様と自分との関係を描いたものは読むけれども、おばあ様との大変だった出来事に関するものは読まないとか。
石井 やっぱりまほさんのお父さんの島尾伸三さんも、かなり複雑だったと思うんですよね。そういう家族の歴史が本棚に詰まっていました。
小川 これはどこになるんですか。
石井 これはご実家の2階ですね。この部屋には主にまほさんの本がありますが、一部にはご両親の本もあったり。家族の歴史が積もってる感じがしました。
小川 またきっと読むことがあるかもしれないですよね。それが積ん読の良さじゃないですか。
石井 本当にそう思いますね。『積ん読の本』をこんなにも丁寧に読んでいただいて、本当にありがとうございました。
このトークショーの様子はオンラインにて2024年11月7日23:59までアーカイブ配信中(チケット販売は11月7日12:00まで)です。詳しくはこちらをご覧ください。
丸善ジュンク堂
10/6 『積ん読の本』発売記念 石井千湖×小川公代 「積ん読とフェミニズム」
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