舞台を中心に活躍する俳優・梅津瑞樹が、オールベトナム撮り下ろしの写真集を11月1日に発売する。自身初の海外ロケだ。
「海外自体が久しぶりだったので、日本人がいない環境が新鮮でした。僕は英語がしゃべれるわけではないし、言語が通じない人とどうコミュニケーションをとろうかなと思っていたのですが、なんだか意外といけました(笑)。
ホテルのロビーにひとりでいたら、現地のおじさんに話しかけられて、だいぶ長い時間ふたりでしゃべっていたんですよ。俳優だって言ったら、そのおじさんも若いころに俳優を目指していたらしくて盛り上がって。今は建築関係のお仕事をしているみたいで、ベトナムの建物についていろいろと話してくれました」
「何を他人に遠慮することがあるんだ」と改めて感じました
それはもはや、普通に英語が話せているのでは?と思うが、本人いわくそうではないという。
「自分の知ってる単語や、拙い文法を駆使しただけです。それでも伝わったのは、感情が動いた瞬間、それは言葉じゃないものとして身体の外に漏れていて、そういう部分でコミュニケーションがとれるからなんだと思います。もちろん複雑なことを伝えることはできないけど、自分から“噴出するもの”で伝わることもある。演劇で表現していくうえでも大切なことだな、と感じました」
ベトナムは、“おもちゃ箱をひっくり返したよう”だったと話す。
「雑然としたところがすごく魅力的でした。まだ整備されきっていない感じにすごくワクワクして、数日間いたくらいじゃ全然掘り起こせないディープなものが、街全体に漂っている感じで……」
ベトナムの街全体が放つエネルギーに当てられた、とも。
「日本人、というと語弊があるかもしれませんが、少なくとも僕の周りにいる日本で暮らしている人々には失われているような熱気というか、パッションみたいなものに当てられました。帰国した時に、自分の背中がすごく丸まっている気がしてしまって。
例えばベトナムでは、対向車が来ていようがバイクにクラクションを鳴らされようが、“自分は道を譲らない”っていう人がたくさんいたんですよ。意志が強いほうが勝つというか(笑)。
僕も、人にぶつかりそうになった時に“ごめんなさい”って避けるのではなく“刺さってしまえ”というくらいの勢いでぶつかっていく、そんな気持ちを持たねばと思わされました。あ、これは例え話なので、本当に道ゆく人にぶつかったりはしないですよ(笑)」
自身の立ち上げた劇団で脚本・演出を務めたり、エッセイ集を出版したり、制作活動にも力を入れている梅津。ベトナムでの経験が、彼の“ものづくり”にも影響を与えたようだ。
「ものを作る時に、“何を他人に遠慮することがあるんだ”と改めて感じました。自分の生き方はこうなんだって、強く提示していく元気をもらったというか。ベトナムの人たちは別に誰に遠慮するわけでも、恥じるわけでもなくああいう生き方をしているわけで、それは生き方としての強度があるな、と。見習うべきだなと思いました」
そんなベトナムで撮影した写真集の見どころは?
「異国の地にいるという時点で、もう確実に他では見られない姿がありますし、旅の中でぼーっとしてるところもふざけてるところもそのまま写っています(笑)。カメラマンさんに不意に撮影されたオフショットのような写真もあって、素顔が多いと思います。撮影してようが容赦なく近づいてくるバイクにびっくりしてる顔とか……(笑)。そんなベトナムの空気感も含めて、楽しんでもらえると思います」
最近のハマりごと
ちょっと自炊でもしようかなと思って、最近はペペロンチーノを作っています。外で食べるペペロンチーノって、なんであんなにしょっぱくて美味しいんですかね。家で作ると、なんか違うなってなりませんか?(笑) この差を埋めたいと思って、お店でよく使われている、銀色のアルミのフライパンを買ってみたんですけど、これでペペロンチーノを作ったら、ちょっとおいしかったんです! 使い込むと味が出てくるらしいので、今から楽しみにしています。
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