綿密な工作で別れさせる道へ誘導

 まずは、浮気相手などターゲットの調査から始まる。

 「夫が不倫している場合、相手の女性の住居や仕事、毎日のルーティンについて尾行や張り込みで徹底的に調べます。それをもとに女性工作員がターゲットに接触して友人関係を築き、なぜ不倫関係になったのかを聞き出す。夫が独身だと偽って不倫と気づいていない場合は、既婚者だと気づくよう仕向け離れさせたり、相手女性に男性工作員を知り合わせて、気持ちが別に向くようにさせたりします」

 別れるように相手を真正面から説得するのではなく、人間関係の環境を変えて選択肢を増やすことで別の道に誘導し、本人の意思で関係を終わらせるのだ。

 「そのためにはターゲットと工作員を自然に接触させることが重要なので、心理的なテクニックを用います。例えば何度も会うことで親近感が湧く“単純接触効果”を狙い、ターゲットの通勤のバス停に工作員が毎日並んだり、ターゲットが住むアパートの空き部屋を借りて顔見知りになるんです」

 ターゲットと親密な関係が築けたら、別れさせるまでのシナリオを作って実行していく。内容は一件一件異なるが、基本的にはカップルが連絡を取り合ったり、デートする“共有時間”を半減させていくという。

 「人間関係は相手への好感度によって、この共有時間が増減します。なので1週間に2回会うカップルであれば、週1回に減るように、片方に工作員をつけて共有時間の半分を奪い取る。すると半分にされたほうに不平不満が出るので、別の工作員がその愚痴を聞いてストレスを癒し、自然に工作員への好意が高まるようにします。

 さらに工作員とのLINEやツーショット写真など浮気の証拠を相手に見せ、別れの決定打に。しかし想定どおりにいかないケースも多いので、修正をしながらトラブルにならないように慎重に進めていきます」

 工作員として約300人が在籍。俳優のように見た目がいい人たちなのか。

 「そんなことはありません。自分はモテないとわかっている男性に美女が近寄ってもだまされていると思う人が多いですから、ターゲットの容姿や好みに合わせてさまざまな外見の人を用意しています」