焦らず、気長に片づけを楽しむことが成功の鍵
“見た目にキレイな部屋”を片づけのゴールにしないことも重要だ。
「片づけの目的は終活ではありません。安心・安全に暮らせることを前提に、親が余生を楽しく過ごせる場所でなくては意味がないと思います。スッキリさせたいからといって殺風景な部屋にするのは避けてほしい。
また、片づけのタイミングやスピードも親に寄り添う心がけを。帰省時にできるだけ進めたいという気持ちはわかりますが、気になるところから少しずつ進めたほうがうまくいきます。そのほうが自然と親も片づけモードになっていきますよ」
さらに、親の健康状態やできることも年を追うごとに変化するので、“1度やれば終わり”ではないと留意する。
「足腰が弱くなったり、食事を作るのが困難になったり、介護が必要になったり……。その時々の親の状態に合わせる形で実家の片づけは続きます。だから大変。でも、片づけをすることでお金の不安がクリアになり、親の心身の健康と安全を守ることができるのですから、結局は自分のためになると腹を括ってやるしかない!
それに、片づけをしながら“子どものころ、この皿でよくホットケーキ食べたよね”など、物を介して思い出を共有するのは、何物にも代えがたい親子の時間になりますよ。特に年末の帰省はよいタイミング。大掃除の手伝いを口実に実家の片づけをスタートしてみてください」
実家片づけの心得7か条
1:片づけの目的とメリットを伝える
「生前の片づけ=終活と捉えてしまう親世代も。片づけは、これからも自宅で健康に楽しく暮らし続けるためにお金や物を整理する手段だとしっかり伝えることがポイント」
2:見た目のキレイを重視しない
「オシャレで整った状態を目指すのではなく、親が快適に過ごせるかどうかを指針にすること。毎日欠かさず飲む薬などは収納せず、机の上などあえて見える場所に置き場をつくる」
3:大変でも結局は自分のためになると理解する
「親を説得し、休日を返上して片づけをするのはかなりの労力。でも、先延ばしすれば数倍もの骨折り仕事になって降りかかってきます。将来起きる苦労の先払いだと考えましょう」
4:一気にやろうとしない
「年齢を重ねると生活空間の大きな変化が負担になりかねません。少しずつ進めることが大事です。毎日使う台所は片づけの効果を感じやすいので、最初の一歩におすすめです」
5:親にとって大事な物は大事にする
「不用だと思っても、無理に手放すことはせず、生活の邪魔にならない場所に保管すること。親は“私の気持ちを大事にしてくれている”と感じ、片づけが進めやすくなります」
6:片づけ状況はきょうだいと共有する
「勝手に片づけを進めると実家にある貴金属やブランド品などを独り占めしていると疑われることも。一緒に作業をせずとも、もめ事を回避するために状況を動画に残して共有を」
7:親の説得は1度や2度で諦めない
「親が“片づけようかな”と思うまで、何度もコミュニケーションを図ることが大切。また、帰省時に急に提案するのではなく、事前に電話などで伝えるほうがうまくいきやすいです」
教えてくれたのは……石阪京子さん●片づけアドバイザー。絶対にリバウンドしない独自のメソッドで多くの支持を得る。自身の経験をもとに実家片づけのノウハウをまとめた著書『実家片づけ「介護」「看取り」「相続」の不安が消える!』(ダイヤモンド社)も。
取材・文/河端直子