「“映画で撮る”と聞いたときは最初ちょっと驚いたんですけど、ただシーズンを重ねるにつれて、毎回いつ終わりになってもいいように心の準備はしていました」
と、話すのは内田有紀。'12年10月から7シリーズにわたって放送されてきたドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』。
医師免許がなくてもできることは“いたしません”。群れ、権威、束縛を嫌うフリーランス医師・大門未知子(米倉涼子)は“私、失敗しないので。”。どんな難手術も成功させてきた。
女性としても、確実に成長させてくれた作品
内田が演じる麻酔科医・城之内博美は第2シリーズから、未知子と同じ“神原名医紹介所”所属のフリーランスとなり、未知子の相棒として多くの命を救ってきた。そんな大人気シリーズが『劇場版ドクターX』(12月6日公開)でファイナルを迎える。
「シーズンを重ねるごとに、緊張感がすごく強くなっていって(笑)。やっぱり、見てくださる方々に“今回は面白くなかった”って言われないようにしないといけないので。老舗の料理店のように、守るべき味は守る。みんなが愛してくださるキャラクターを逸脱せず、でも深みは加えるアップデートを意識してきました。いくら慣れ親しんだ役でも気を緩めることなく、結構なプレッシャーで毎回演じてきました」
本作の撮影は“これでラスト”という雰囲気は一切なく、すべてがいつもどおりだったと振り返る。
「私もヨネちゃん(米倉)もプロデューサー(内山聖子)さんも、すごくさっぱりしていて(笑)。内山さんは“これで終わりにするよ”、ヨネちゃんも“いろいろ考えたんだけど、そういう方向にしてみました”みたいな感じで。私も“そう決めたのね。
うん、わかった”という感じで、特にウエットな会話はなく。そんなカラッとしたところもたぶん、みなさんが『ドクターX』を応援してくださる要因だったのかなと思います。押しつけず、見終わった後には爽快感。だから“終わりもこうなのかな”という感覚です」
本作では、ベールに包まれ続けてきた未知子の過去が明かされる。そして、神原晶(岸部一徳)が倒れるという最大の危機も……! 主演の米倉とはプライベートでも仲良しなのだろうか?
「私たちがゴハンに行くのは、だいたいクランクアップ後。でも、いつも“X会”になっちゃって(笑)。ヨネちゃんだけでなく、一徳さんや西田(敏行)さん、勝村(政信)さんなど、お兄様方も一緒に。ヨネちゃんとふたりでゴハンに行ったときって、話す内容が現場と変わらない(笑)。
逆に言えば“現場でそんな話してもいいの!?”っていうくらいプライベートな話をするんですね(笑)。お互いの人生観、仕事についてなどを深く。だから周りからは“もうどっか、場所を移して話しなよ”って言われてました(笑)」
その関係は、どこか博美と未知子を思わせる。
「そうですね。未知子と博美ってデフォルメされていますけど、たぶんとても自分たちに近いキャラクター。どこかさっぱりしていて、仕事に真剣に向き合っていて、頑張って努力して、結果を出す。その後はワーッとはしゃぐ(笑)。役柄と私たちがだんだんリンクしてきたというか、お互いに引っ張り合ってキャラクターがいる気がします」
キャリアの長い内田にとっても、12年にわたって演じてきた城之内博美への愛着は、やはり強いと微笑む。
「自分を俳優としても、人間としても、女性としても、確実に成長させてくれた作品。仕事と向き合う大切な30代の半ばから40代後半までの時期を過ごさせてもらったので。変わらない共演者、スタッフと一緒に年を重ねていくことも、視聴者の方との長年のお付き合いも純粋にうれしかったです」
博美という意志ある女性への憧れも、シリーズ開始当初はあったという。
「私自身、若いころはどこかで人の顔色をうかがっていて。“この人は今、私に笑ってほしいんだろうな”と思ったら笑っていた。そんな流されやすいところがあったんです。でも、年を重ねるごとに博美とリンクする自分も生まれ始めてきて。必要以上に愛想を振りまくのではなく、本当に心から楽しいときに笑って、それをみんなと共有して。今は無理のない自分で生きられている気がします」
11月に49歳を迎えている。落ち着いて年を取れるようになってきた、とうれしそうに話す。
「私、20代のころから早く40代になりたかった人間なんです(笑)。自分の本心を伝えるのには、若さって邪魔だなと思っていたんです。人生において失敗や成功を経験してきたことで、言葉に説得力がやっと持てるようになった。どこか我慢して、何かに属して生きていくよりも、自分らしく輝ける方法を見つけられた。そんな感謝の40代でしたね。
これから迎える50代は、その感謝を返していきたい。自分にできることがあれば手を差し伸べていきたい。誰かを救えたり、助けられたりする自分でありたい。だからもっともっと、交流や環境を広げたり、深めたりしていきたいなと思っていますね」
内田有紀の笑顔は、今がいちばんまぶしい─。
着替え中、まさかの!?
「私、健康ランドや温泉にたまに行くんですけど。隣でお着替えしている方が『ドクターX』の話をされていることがたまにあるんです(笑)。“今回はこういう手術をしてすごかった”“こんな病気を治してくれるあんな先生がいたらいいのに”って。
“あの回だよね?”って会話に参加したかったくらい(笑)。今回の劇場版を含めて『ドクターX』は人が生きる希望を与えてくれるところが大好きなんです。『週刊女性』の読者のみなさんにぜひご家族や友達と劇場でご覧いただいて、またぜひ“隣”で感想を聞かせてください!(笑)」