劇団の先輩たち以外にも、尊敬する人がいる。父との共演もあった志村けんさんだ。
「僕はNHK『LIFE!』などで数回コントを経験しましたけど、志村さんはすごいと思いました。
僕は何回も撮り直し。志村さんの『だいじょうぶだぁ』は一発本番らしいです。
人を笑わすというのは本当に難しい。ただ普通にやればいいんだろうけど、普通じゃなくなっちゃう」
落語家の柳家小三治さんからも学ぶことがあった。
「小三治師匠が行き着いたのは“落語というのは、ただやれば面白くなるようにできている”ということ。落語をやるうえで邪魔になるものは、とにかく排除する。
気がついたら柳家小三治という人間もいなくなって、座布団の上にお話だけが乗っかっている。自分すら消すというのが究極なのかもしれない」
柄本佑が惚れ込む「TOKIO城島スタイル」
柄本が、以前から愛してやまないのがTOKIO。中でも城島茂に惚れ込んでいる。
「簡単に説明できないんですけど……。
グループというのは、それぞれに個性があるけど、その中である種、無個性でいるのが城島さん。目立たないでいる人がリーダー。そのおかげで、周りのメンバーは自由にキャラクターを出せる。
放牧スタイルというか“城島牧場”なんです。そして、城島牧場には“柵”がない。それがリーダーの気質だとも思うんです。
嵐の大野智くんもおおらかで、同じタイプですよね」
柵をなくすことが、俳優にとって大切なことだと痛感している。
脚本で縛られて役者は自由になる
「昨年、脚本家の山田太一さんが亡くなられて、山崎努さんが追悼文の中で、役者と脚本家の関係について書いていました。
山田さんはセリフの“てにをは”も変えてほしくない人だったそう。役者は、台本どおりに発音しなければならないわけですが、代わりに身体の自由を得るというんです。
脚本というのは、ある種、役者を縛るような行為。ただ、縛られることによって役者は自由になるという側面があるんです」
それは『光る君へ』で道長を演じていて改めて気づいた感覚であった。
「大石さんの脚本も、時代劇だから変えようがないということもある。その代わり、身体の自由を得る。縛られているんだけど、自由を見いだすみたいな。だから、そこに柵がないと感じるんです。柵を作っている行為なのに柵がなくなる。
城島さんの話をして、そこに行き着きました(笑)。役者と脚本の関係って、そういうことなんです」
のんびり屋の三男坊から栄華を極めるまで、道長の生涯を体現した。俳優としても成長し、これから何を目指すのだろうか。
「映画監督の夢は、今も持ち続けていますよ!」
“柵をなくす”という極意を身につけた柄本が監督を務める長編映画も見てみたい。