『命咲かせて』『心かさねて』などのヒット曲に恵まれ、NHK紅白歌合戦出場、日本レコード大賞「最優秀歌唱賞」受賞、と着実に演歌歌手として歩みを進めてきた市川由紀乃。昨年7月に卵巣がんの告知を受け、以来半年間にわたり過酷な闘病を続けてきた。昨年末に治療が一段落し、活動再開も目前だ。どんな思いで病や治療と向き合ってきたのか話を聞いた。
「病気がわかる1年前ごろから生理不順、不正出血、腰痛、鼻血などの症状が起こるように。でも50代を目前に、女性特有の体調の変化が起きているだけと思い込んでいました。今思うと病気が見つかり仕事がストップしたら……と恐れて、見て見ぬふりをしていたのかもしれません」
見て見ぬふりをした身体からのSOS
昨年の春になって、歌謡界の大先輩である由紀さおり(78)に、不調について相談した。
「すると、すぐにでも検査を受けたほうがいいと、婦人科の先生を紹介してくださったんです。私は病院が苦手でめったに行かないので、あの時の由紀さんの言葉がなかったら発見はもっと遅れていたはずです」
5月末に血液検査とMRIを受けるとすぐに病院から連絡があり、卵巣腫瘍の疑いがあるから病院に来るよう言われる。
「婦人科の先生から、腫瘍は悪性の確率が高く、手術が必要になるから仕事はすべてストップするように言われて。それを聞いて自分のことよりも先に、たくさんの方に迷惑をかけてしまうと思い苦しかった。7月には松平健さんの記念公演の出演も予定していたので、関係者のみなさまには申し訳なくて言葉が出てきませんでした」
6月初旬には大学病院で精密検査を受け、右の卵巣に腫瘍があることが判明。6月7日には休業を発表し、7月の中旬に手術入院が決まった。手術前の説明で、卵巣だけでなく子宮とリンパや腹膜などの周辺組織まで切除する可能性があると告げられる。手術の結果、腫瘍は悪性だったものの卵巣内でとどまっておりステージは1だったが、再発防止のため女性の臓器をすべて失うことに。