今では、お互いの両親ともに、わが子の性自認を認め、ふたりのことを祝福してくれている。
物心ついたころに生まれ持った性別と自認する性の違いを感じ、「悩み、病んだ時期もあった」というが、今は唯一無二の理解者を得て、心穏やかで幸せな日々を送っている。
「法的には入籍できるのですが、今後、性別変更をするかもしれないから『入籍はおいおい考えていこうね』と、ふたりで話しています」(さとるくん)
普通に結婚したと親は思っている
じゅんさん(仮名・39歳)は、男性という生まれ持った性を自認しているのだが、恋愛感情や性的指向が他者に対して向かないアセクシュアルだ。
じゅんさんの職業は医師。見た目も素敵なじゅんさんは、学生時代も医師になってからも、女性に言い寄られることがあった。しかし、友達としては好きになっても、恋愛感情がまったく抱けなかった。
「なので、最初自分はゲイだと思ったんです」
そこで、ゲイが集まるような場所に出入りしてみた。
「ところが、触れられたり、身体の関係を求められたりすると、こちらも違和感を感じる。いったい自分はどうなっているんだ、と」
松村さんは言う。
「私のところに初めて訪ねてきたときに、『僕はゲイなんです』と言い張っていた。でも、よくよく話を聞いてみて、『ゲイではない、アセクシュアルではないの?』と、私は言ったんです」
自分の性的指向を自認したじゅんさんだが、一人で生きていくのではなく、パートナーのいる人生のほうが豊かだと日頃から思っていた。そこで、LGBTサポート協会を通じてアセクシュアルの女性、ゆみさん(仮名・29歳)とお見合いをし、交際を経て、結婚を決めた。
こちらのカップルは、ふたりとも戸籍の性と自認している性が一致しているので、結婚することに問題はない。
しかし、アセクシュアルなので、一緒に住んで一緒に食事をしたり出かけたりはするのだが、部屋は別々でセックスをすることはない。友情婚だ。
この内情を、互いの両親は知っているのか?
「彼女の両親は、僕らのすべてを理解したうえで、結婚を祝福してくれています。でも、僕の親は何も知らない。『これまで女っ気がなかった息子が、やっと結婚してくれる』と思っているんじゃないかな(笑)。
この先も、僕の性的指向は親には言いません」
多様化の時代だ。どんな組み合わせのカップルがいても、そのふたりが信頼するパートナーシップを築いていれば、それが幸せのカタチなのではないか。
取材・文/鎌田れい