副作用で手足の皮がむけ、爪も失う
治療方法の選択が大きな分かれ道になることを経験した小島さん。転移後の治療でもまた岐路に立たされる。
「一緒にバンドを組んでいたドラマーが私と同じように乳がんから肺に転移し、先に治療を進めていました。彼女は、免疫療法の比較的新しい薬を使っていて、抗がん剤のような副作用もなく肺の転移がなくなったと言っていたのです。『私も同じ薬を使うのがいいのかな』と頭をよぎりました」
しかし、主治医が示したのは、化学療法の抗がん剤の使用。彼女が別の薬で回復に向かっていることを耳にしていただけに、この選択に不安がないとはいえなかった。
「本当に大丈夫なのかなとも思いましたが、素人だから何がよいかわからない。でも、見落とされていたがんを見つけてくれた先生だから信頼しようと。転移の怖さも知りましたし、信じて徹底的にがんと闘おうと決めました」
そこから約1年4か月にわたる抗がん剤治療がスタート。つらいとは聞いていたが、それは想像以上だった。
「手足症候群といって、手や足の皮膚と爪がすべてなくなる副作用が起こりました。手足が火傷したような状態になるので、指でボタンも留められないし、トイレで紙を使うのも痛い。もちろん、靴も靴下も痛みではけません。靴下のちょっとした柄が刺激になるんです。口内炎ができることも増え、歯磨き粉も痛みで使えなくなりました。激痛と闘う毎日をそばで見ていた母もすごくつらかったそうです」
当時はがん保険を販売する会社に勤めており、上司の理解を得やすかったのが救いだったと振り返る。できるだけ在宅勤務ができるように支えてもらえたからこそ、なんとか痛みと闘う気力を保てた。
「激痛に服用を断念する人も多い薬でしたが、私は飲み始めて数か月でがんの進行度を判断する腫瘍マーカーの数値が下がって。飲み続ければ大丈夫、つらいけど頑張ろうと思えるようになりました」
その後、順調に数値が下がり、その抗がん剤から卒業。一方、免疫療法の薬を選択したバンドメンバーは喉と脳への転移がわかり、帰らぬ人となった。