目次
Page 1
ー 男性スタッフに飛び蹴りしていた90年代のテレビ
Page 2
ー 岡村は90年代で時が止まっている
Page 3
ー 結婚しただけでは人は変われない
世の中には「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」だけでなく、「ヤバい男=ヤバ男(ヤバダン)」も存在する。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、芸能人や有名人の言動を鋭くぶった斬るライターの仁科友里さんが、さまざまなタイプの「ヤバ男」を分析していきます。

第41回 岡村隆史

 違法な賭博であるオンラインカジノを利用したとして、令和ロマン・高比良くるまさんら吉本興業所属の芸人が警視庁から任意の事情聴取を受けたと報じられました。くるまさんの賭博関与は2019年から2020年だそうなので時効が成立していますが、けじめの意味もあるのでしょうか、くるまさんは19日、自身のSNSで、当面の間、活動を自粛すると発表しています。

男性スタッフに飛び蹴りしていた90年代のテレビ

 これを受けて、ナインティナイン岡村隆史さんが21日深夜放送の『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)内で「意見いろいろあるじゃないですか、これ休まなあかんのとか。そこまでせなあかんのかという意見もあったりする(後略)」と自粛を疑問視。

「俺、すごい思うねんけど、芸能人じゃない一般人、どれくらいオンラインカジノやってんの? オンラインカジノと不倫。めっちゃくちゃやってると思うで、めっちゃくちゃ。こんだけ芸能人が『リスキーですよ』『不倫したら一発で仕事なくなりますよ』って言うてても有名人すんねん、政治家の人かてやんねん。有名人やから写真撮られてさらされるけど」

 と、まるで「一般人だってやっているのに、芸能人ばかりがさらし者になって不公平だ」と解釈できてしまう発言をしたのでした。言うまでもありませんが、芸能人だからオンラインカジノがアウトなのではなく、芸能人でも一般人でも違法行為はアウトなのです。

 岡村さんが「芸能人にばっかり当たりが強い」と思ってしまうのは、過去の記憶が影響しているのかもしれません。若い方に言うと驚かれるのですが、テレビが「何でもアリ」だった時代がありました。

 ドラマでは若い女優さんが上半身裸をさらしていましたし、フジテレビの女子アナは番組で水着になっていました。男女とも、報道番組にたずさわる大物キャスターが不倫を報じられることはよくありましたが、1週間から1か月程度の謹慎で復帰しています。人気の芸人がイジりという名目で、自分の番組に出演してくれた女性のシロウトさん(一般人)の外見をからかうこともよくありましたし、男性スタッフに飛びげりを食らわせていたこともあります。

 岡村さんが芸能界入りした90年代もこういう傾向はあり、岡村さんはいつのまにか、テレビは男性が主役で、女性は添え物もしくはお色気要員、売れている芸能人は一般人よりも強者であり、ひいては「売れている人は何をしてもいい」という価値観ができあがってしまったのかもしれません。

 1月23日に引退した中居正広さんも90年代に一代地位を築いたスターでしたが、女性とトラブルに発展した背景には、この価値観が影響しているのかもしれません。岡村さんはトラブルこそ起こしていませんが、このような考えから「あんなにがんばって売れたのに、なぜ大目に見てくれないばかりか、どうして足をひっぱるのだ」と、倫理を度外視して、芸能界の論理だけで物を見ているからではないでしょうか。

 岡村さんが「不倫したくらいで自粛する必要はない、おかしい」と発言することは、もちろん本人の自由です。問題は岡村さんがちょっと被害妄想的というか、怒りの矛先を間違えているように見えることなのです。

 岡村さんは、芸能人の自粛は一般人がSNSで騒ぐから、つまり、自分の敵は一般人だと捉えているように感じます。しかし、どうして不倫や不祥事で芸能人が自粛したり、テレビに出られなくなったりするかというと、テレビ局がコンプライアンスを重視するようになったから。

 ですから、もし本気で不倫やオンラインカジノの件で自粛するのはおかしいと思うのなら、テレビ局に直接言えばいいのではないでしょうか。でも、それをしないのが、岡村さんらしさなのかもしれません。なぜなら「強い者には服従」という姿勢は今に始まったことではないからです。