結婚しただけでは人は変われない

 女性を低く見ることをやめるために、矢部さんは岡村さんに結婚を勧めます。矢部さん曰く、妻が出産して子育てする姿を見るうちに、女性へのリスペクトが生まれていくのだそうです。

 いい話に聞こえますが、自分の子どもを産み育ててくれる人というのはメリットのある女性と言い換えることもできるわけで、女性を含めてメリットのない人全般を下に見る岡村さんと、自分のメリットのある女性をリスペクトする矢部さんは似ている気がしますが、矢部さんのお説教に感動した人は多いようです。

 矢部さんのアドバイスを聞き入れたのか、岡村さんも同年10月に結婚を発表します。2022年にはお子さんも生まれ、2月26日放送の『なるみ・岡村の過ぎるTV』(関西テレビ)に出演した際はお子さんのお弁当を作っていることを明かすなど、子煩悩なパパであるようです。

 しかし、結婚してよき家庭人にはなれても、岡村さんの言動が“まとも”になったかと言われると首をかしげてしまいます。岡村さんの妻子も一般人のカテゴリに入ると言えますが、こちら側の一般人は愛せても、その他大勢、つまり自分には無関係の一般人を敵視するかのような発言が目立ちます。

 結局「結婚すれば女性蔑視が治る」という矢部説は残念ながら間違いで、結婚して矢部さんのようにいい方向に変わる人もいるけれど、みんなが変わるわけではないということだと思うのです。結婚しようがしまいが、ヤバい人はヤバいということですし、自分で変わろうとしなければ、人は変われないということでしょう。

 番組名は失念しましたが、創業何百年、創業秘伝のタレを継ぎ足してきたという老舗の飲食店の方が、老舗が老舗たる秘訣について言っていました。タレの味というのは創業当時と全く同じではなく、季節や時代によって微妙に調整することをし続けているそうです。考えてみれば、江戸時代と現代で人の味覚がまるっきり一緒ということはないでしょうから、当然の企業努力であり企業秘密と言えるでしょう。

 岡村さんも50代を迎え大物芸人と言われる人になったわけですから、自分の良さを保ちつつ、時代に合わせるところは合わせてほしい。“老害風味”のヤバい老舗にはならないでほしいと心から思います。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」