概念を変えた『大奥』
そして、世帯視聴率の上昇を妨げている原因がほかにもある、と語るのはベテラン映画記者。
「NHKの番組は昔から、家族で楽しめるというのが基本だったと思います。ですから、ドラマでは血が噴き出すような残酷なシーンや度が過ぎる暴力的なシーンはありませんでした。民放で放送されていた時代劇ではリアリティーを求めて、斬られたときの効果音や着物が切られて出血している様子が写し出されることもありました。
ですが、大河ドラマの合戦シーンなどでは見られません。また、恋愛ドラマでも激しいラブシーンが描かれることはありませんでした。それが、10年ほど前から変わってきたような気がします。特に10時以降の遅い時間帯に放送されるドラマですね」
“大人の恋愛ドラマ”ではラブシーンが不可欠とも言えるのだが、そこはNHK、さほど過激なシーは描かれなかった。ところが、昨年放送された『大奥』がその概念をがらりと変えてしまったのだ。
「ラブシーンというより、もはや“濡れ場”と言っていいほど過激なシーンの連発。ボーイズラブも描かれて、業界から“NHKは攻めてるな”という声が多数上がりました」(前出・テレビ誌ライター)
それでも、『ドラマ10』という枠の、遅い時間帯に放送されたドラマなので小中学生が見ることはないと思われた。もしそんなドラマが、一家団欒の時間帯に放送されたのなら、“攻めてるね”と歓迎されることはなかっただろう。そして、
「昨年放送された大河ドラマ『光る君へ』はこれまでの大河とは違って、異例尽くしと評されました。中でも、キスシーンなどのラブシーンが多く見られ、時代劇ながら“大人の恋愛ドラマ”として見ることができました」(前出・映画記者)