この2つの症状を併発している人も多いので、櫻井先生は「膣の萎縮と骨盤底筋の弱りは同時並行で起きている」と、考えている。

性交痛や尿漏れは身体からのサイン

 とはいえ膣や骨盤底筋は自分では見えない部分でもあり、特に症状がないと、加齢で変化していることに気づきにくいものだが─。

「何か困り事が出て受診をするのは、治療やその後の対策ができるのでむしろいいんです。特に悩みがないからとエストロゲンが減っている現状を知らずに対策もしないでいると、高齢になって突然骨折してしまったりする。

 だから更年期に入ったら、ホルモン値など、ご自身の『現状』を把握しておくことは大事だと思います。性交痛や尿漏れは『次のステップに備えようよ』という身体からのサインと捉えてみては

【膣ハイフ】超音波を発生させる器具(写真右上)を膣の中に挿入し、照射する。施術は医師または熟練の看護師が担当
【膣ハイフ】超音波を発生させる器具(写真右上)を膣の中に挿入し、照射する。施術は医師または熟練の看護師が担当
【写真】あなたはいくつ知っている? 婦人科形成でできる「膣若返り治療」

 萎縮性膣炎にはどのような治療法があるのだろうか。

保湿剤を用いることもありますが、根本治療としてはホルモン補充療法(HRT)が有効です。性交痛に悩む方には膣内にホルモン剤(膣坐薬)を入れる治療をすすめることも。膣まわりのお悩みはもちろん、ホットフラッシュや不眠といった更年期特有の症状も改善します。HRTは保険適用なので、症状があるならまず婦人科などに相談して、HRTを検討してみるといいでしょう

 HRTと併用して行うとさらに効果的なのが、櫻井先生がクリニックでも提供している自費診療だ。

「膣の萎縮には『膣ハイフ』が有効です。これは膣の内側に超音波を照射する治療で、膣粘膜のコラーゲンを再生させることで膣を引き締め、潤いとふっくら感が戻るというもの。膣周辺の骨盤底筋までエネルギーが届くので、骨盤底筋の引き締めにも効果があります。

 症状によりますが30分程度の時間でできますし、メスを入れるわけでもないので痛みもなく、生活が制限されることもありません。膣ハイフを1回行うと効果は半年~1年ほども持続します。その後は、症状の程度によりますが3~6か月間隔で続けていくのがおすすめです

 そのほかには、膣壁にヒアルロン酸を注入して内側をふっくらさせる「膣ヒアルロン酸注射」、ヒト由来幹細胞培養上清液を膣壁に注入し、粘膜の潤いを改善する「膣エクソソーム」といった治療も。

これらは単体でももちろんOKですが、併用するとさらに効果的です。地方から来られる患者様の中には、膣のメニューを1日かけてフルでやっていかれる方もいます