――あえて女性目線で、この映画を楽しむポイントを教えてください。
「女性しか読まない雑誌だから言わせてもらうと、石井監督は“色気”を撮るのがうまいんです。女性が見て魅かれるのは、女性(の登場人物)もそうですけど、男性の色気でしょうね。それから水もしたたる……、したたるって言うと聞こえがいいですけど(笑い)、全身ずぶ濡れになって、目だけらんらんと光らせて芝居をしているので、その奥にある狂気と色気みたいなものを見ていただけたらと」
――東出さんの色気も出てる?
「いやー、それはわからないですけど(笑い)。映画評論家の方がそう書いてくださったのを読んで、よかったのかなって思いました(笑い)」
――雨の中に入っていく芝居は、演じる側も楽しんでやれるもの?
「じゃないです(笑い)。普通の映画の雨って、全身が濡れるまで5秒とか10秒の猶予があるじゃないですか。石井監督の現場の雨って、1秒で下着までグッショリなんですよ。ビックリするぐらいです。本物のゲリラ豪雨にあった時って、みんな頭抱えながらウワーッて走り出すじゃないですか。それよりもキツい状況の中でグワッと(アクションを)やるので、芝居も自然と本能的になりますね」
――セリフや音もよく聞こえない?
「聞こえません。“カット!”の声もよくわからない。また、カット尻が長いので、みんなず〜っと芝居を続けています。こうやって話していると、だんだん思い出しますね(笑い)」
――撮影は去年の6月でしたね。
「そうですね」
――6月というと、『ごちそうさん』を3月まで放送していたから……。
「映画の『寄生獣』と『アオハライド』を撮り終わって、『GONIN』をまる1か月。最終日は朝の6時まで撮って、朝9時から『親父の背中』(渡辺謙とダブル主演のドラマ)のリハでした」
――それは、それは(笑い)。役の振れ幅もすごいですね。青春真っ盛りの高校生を演じた『アオハライド』なんて、まったく違う世界だし。
「真逆ですね、本当に(笑い)。あえて共通項で言うと、親を亡くすとか。なぜか僕は親の死というのが多いんです。『アオハライド』も『花燃ゆ』の久坂玄瑞もそうでしたし」
――東出さん自身は、お父さんと何歳で死に別れたんですか?
「僕が22歳の時ですね」
――もう成人はしていたものの、お母さんは心配だったでしょうね。
「まあ、うちは兄もいますけど、母は子どもたちによく、ずっと心配は心配よって言いますね。何歳になっても、そうなんだろうなって思います」
撮影/高梨俊浩