11月にかけて国民ひとりひとりに“マイナンバー”の記載された通知が届けられる。果たして個人情報はどのように管理されるのだろうか?
改正法で決まったのは「予防接種歴」や、全自治体で実施する「特定健康診査」、いわゆる“メタボ健診”への個人番号のひも付けだ。これらの情報から保健指導を行い、医療費抑制に努めるというのが建前だ。
『共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会』の白石孝さんとともに『共通番号の危険な使われ方』を著した神奈川県保険医協会・事務局主幹の知念哲さんは、強い懸念を抱く。
「メタボ健診は、がんや糖尿病などの生活習慣病の前段階にあたるメタボ状態を発見し、改善指導して発病を予防するとの政策です。ところが、もし成人病になってメタボ健診を受けていないのがマイナンバーで判明したら“自己責任です”とされてしまい、治療に必要な公的補助が受けられないことも想定されます」(知念さん)
さらに知念さんが恐れるのが、個人番号カードと健康保険証を一体化させようという政府の方針だ。
「一体化されたら、健康保険番号の読み取り機を医療機関の受付に設置しなければなりません。それは、市町村や協会けんぽなどの保険者とオンラインでの常時接続を意味します。となるとマイナンバーは患者のレセプト(診療報酬請求)やカルテ情報を収めた医事コンピューターと連携し、どんな病気をどこで治療したかが明るみになります。
人によっては、(難病や精神疾患、HIVなど)隠したい病歴もあります。でも、それらの情報は産業界では“お宝情報”。不正アクセスや内部からの情報漏洩は、おそらくある。すると、その個人に製薬会社や食品会社が群がり、就職・結婚差別が起こるかもしれません」(知念さん)
日本医師会は政府案に猛反対しているため、同一化はまだ検討中であるが「油断できない」(知念さん)。
健康保険証との同一化は政府がどうしてもやりたいことだ。前述のとおり個人番号カードの所有は任意。だが、健康保険証と同一化されると、私たちはカードを持たざるをえなくなる。
さらに知念さんが懸念する情報漏洩は、国民背番号制を施行しているアメリカや韓国では「メチャクチャだ」(白石さん)。両国では毎年、不正アクセスや内部からの情報漏洩が実際に起きている。
「日本でも昨年、通信教育を手がけるベネッセコーポレーションの関連社員が金目的で900万件の個人情報を流しました。マイナンバーに基本4情報や預金、医療情報、クレジットカードなどがひも付けされるとその情報は垂涎の的。絶対に狙われる」(白石さん)