——それでも、勝算はあったんですか?

リッキー「僕の中で、ダンディ坂野は絶対イケると思っていました。お笑いライブに出演すれば、普通のお客さんにはまったくウケないダンディのネタが、コアな業界人にやたらとウケていたところがあるんですよ。

 そのような人たちはみんな“すごいのを見つけたね。ここまでスベっているのも珍しい”とか、“なにか言ったあとにゲッツ!と言うのもいいね”と言われました。ダンディの芸を見た誰もが“あの素人みたいな芸人はなんだ”と言いながらも、すぐに真似て“ゲッツ!”とやっていた。それを見たときに、これは誰もが簡単にできるからいけるな、と感じた。この“ゲッツ!”というネタを作り上げるために、同じ言葉と同じ動作の繰り返しをひたすら練習したんですよ」

小林「僕が“お笑い班”に入った時には、ダンディ坂野の“ゲッツ!”というネタは完成されていたんです(笑い)。やはりキレがすごい。当時、ブッチャーブラザーズがものすごい稽古をしたと聞いていました」

リッキー「当時、いろいろと支援してくれていた元役者の人が稽古場を持っていて、ネタの稽古に使わせてくれていたんです。そこで皆でそれぞれが思う“ゲッツ!”をやりながら、試行錯誤のなかで今の“ゲッツ!”の原型ができました」

——小林さんが見た時にはもう「ゲッツ!」が完璧にできあがっていたんですね。

小林「できあがっていました。ダンディって、けして器用な芸人ではないと思います。器用な芸人さんっていうのは、お客さんの反応や世の流行なんかに合わせて、芸風をコロコロと変えていってしまいますよね。

 でも、ダンディの場合はずっとあの芸をやり続けていて完成度を高めていた。それが仕事につながっているところがあります。他の芸人さんやタレントさんは、よくも悪くも時代に乗ろうと工夫することが多いですが、結果、流行りに乗り遅れてしまう。ダンディはずっとあの芸を貫いたからこそ、時代や彼の風貌が“ゲッツ!”に合ってきて、あのネタが面白いという雰囲気になったんじゃないですかね」

*今回の連載【エンタメヒットの仕掛人】で行われたインタビューは全4部構成。本編はその第2部になります。第1部『ウッチャンの番組に出演した芸人がブレイクしやすい理由』はコチラからご覧ください! 次回は12月26日に公開予定です。