井上真央

 歴代大河でワースト3位の視聴率で始まった同ドラマ井上真央の演技は評判がいいようだけど、いったい何がいけないのだろうか。作家で歴史エッセイストの堀江宏樹さんによると、

「『篤姫』路線を狙ったものの、見事に失敗している感が否めない。主役の文さんは、マイナーすぎるし忍耐の人物。"あのころ、兄・松陰は……"とかナレーション担当だったら適任だったかなぁ。長生きしてるんで。だからこそ、松陰や久坂玄瑞が魅力的でなければいけないのに"学校の放課後か!"って見まがうほど、全員"若者感"丸出しで同じに見える。現時点では、イケメン好きも歴史ファンもどちらも感情移入しづらい」

 今回、大河プロデューサーをつとめる土屋勝裕氏はひとつの見どころとして"イケメン大河"という要素を挙げた。しかし、視聴者には"幕末版『花より団子』"といった印象を与えてしまっているようだ。一方で、堀江さんはこれまでの大河との違いも指摘する。

「過激な長州藩という定番イメージを違う形でアプローチしようという試みは素晴らしいと思います。でも大河って、お金のかけ方しかり物語の展開しかり、"王道"が求められていると思う。視聴者の"期待"を無視しないでほしい。具材が山盛りでも、肝心の白米が見当たらない丼物みたいです」

 ドラマ内で松陰が門弟たちに語っている言葉、《至誠にして動かざるものは未だこれ有らざるなり》。これは「誠を尽くせば動かすことができないものはない」という意味。真心込めて作っている作品であれば、きっと視聴者の気持ちも必ず動くハズ! 今後の展開に期待したいところだ。

 


(プロフィール)

堀江宏樹(ほりえ・ひろき) ●1977年生まれ、大阪府出身。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒。大学在学中からフリーランスライターとして文筆活動を開始。独自の視点から人物像を読み解き世界史、日本史に関する著書を多数執筆。滝乃みわこ氏との共著『乙女の日本史』シリーズがベストセラーに。