■涙の1分間スピーチ

 最終選考会が近づき、ミスの候補者たちは、重要な審査のひとつである、1分間スピーチの練習に励んでいた。芳賀さんは、そのスピーチで、これまでふたをしてきたシンクロと向き合った。

「ケガでシンクロを続けられなかったけれど、これからを考えたら、何もできない私よりも、新しいことで頑張ったほうが自分のためになる。自分は、これまでスポーツの世界しか知らなかったけれど、まだまだいろんな世界がある。それはミス日本の勉強会に出ることで学べたこと。そして、もしミス日本に選ばれたら、これまで支えてくださった人がいることを思い、私の笑顔で幸せになってもらいたい─」

 本番の日、その思いを1分間スピーチに込めた芳賀さん。最後にはこう結んだ。

「座右の銘は“つよく正しく美しく、つらい時こそ笑顔”です」

“つらい時こそ笑顔”……ケガから約1年、その本当の意味を知った芳賀さんは、涙をこらえることができなかった。

「スピーチの場で泣いてはいけないと指導の先生方に言われていたので、泣いてしまったときは“あ〜、やっちゃった”と思っていました」

 しかし、彼女のスピーチは、多くの審査員たちの胸を打った。母に背中を押され、ダメもとで応募したミス日本のグランプリに輝いたのだ。

 今後はスポーツの魅力を伝える活動もしていきたいという芳賀さん。

「5年後の東京五輪に何らかの形で加わっていたい。それが私の新しい夢になりました」