20歳になった娘に行ってみたいとねだられたからだ。
だいたい20歳の大学生の娘から親に一緒に行ってくれと言われるのもボクにとって意外なこと。そして、娘が「競馬」に興味を持つなんて、意外中の意外である。
ボクからみた娘は、ごく普通の女のコ。よくも悪くも、普通の娘である。ちょっと年の割に精神的に幼いが、わりと素直。流行りものには乗りやすい、イマドキのコでもある。
だからこそ、娘が行きたいと言い出した「競馬」にピンとくるものがあった。それで、ボクもどんなものだか「競馬場」を覗いてみたくなった。
昨今、若者の車離れ、若者の活字離れ、若者の恋愛離れ、留学離れに、「競馬」などのギャンブル離れ、凶悪犯罪離れなんていうのまで聞く。いろいろなものに興味がなくなっているのか? 凶悪犯罪に興味がないのは結構なことだが、おじさんたちは今後の日本が心配になってしまう。
そこで、20代前半女子に聞いてみた。
「友だちが行ったっていうんだよね、きれいだったって。競馬場」「おいしいお菓子や食べ物もあって、お祭りみたいだったって」「部屋借りてパーティーができるんだって」「コースの真ん中でバーベキューやビヤガーデンだってやるみたい」……「競馬場」の話題が上ることが増えたらしい。流行のバス型屋台やイルミネーション、花火……、もちろん馬が走るのが美しい、とか。個室の指定席もあり、「部屋借りてれば怖くないもんね」という。
「競馬」ではなくて、「競馬場」。やはり、娘もそんな流行りかけに乗っているのかもしれない。話題になった「カープ女子」も「スタジアムに行くこと自体が楽しい」と自然発生的に生まれて、ブームになっていったという。
6月28日、日曜の宝塚記念で秋まで中央競馬のGIレースはお休みだが、東京シティー競馬は夏のイベントが満載だ。
そして、最後に娘は「100円賭けてそれが1000円になったの」と。ちょっとした嬉しいおまけつきが楽しいらしい。
「お馬女子」「お馬ガール」――来年あたりに流行語大賞にノミネートされないかな。
※2004年までは成年であっても学生・生徒に該当する者が勝馬投票券の購入譲り受けをしてはいけないという競馬法の規定があったが、2005年1月の改正によって、成年なら全員、勝馬投票券を購入できるように改められた。
〈プロフィール〉
神足裕司(こうたり・ゆうじ) ●1957年8月10日、広島県広島市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代からライター活動を始め、1984年、渡辺和博との共著『金魂巻(キンコンカン)』がベストセラーに。コラムニストとして『恨ミシュラン』(週刊朝日)や『これは事件だ!』(週刊SPA!)などの人気連載を抱えながらテレビ、ラジオ、CM、映画など幅広い分野で活躍。2011年9月、重度くも膜下出血に倒れ、奇跡的に一命をとりとめる。現在、リハビリを続けながら執筆活動を再開。復帰後の著書に『一度、死んでみましたが』(集英社)、『父と息子の大闘病日記』(息子・祐太郎さんとの共著/扶桑社)、『生きていく食事 神足裕司は甘いで目覚めた』(妻・明子さんとの共著/主婦の友社)がある。Twitterアカウントは@kohtari