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 バレエにスポットを当てた異色のドキュメンタリー「芸能人が本気バレエ! 密着200日…白鳥の湖を踊りたい! 世界最高峰の舞台に誰が?SP」(TBS系、12月9日夜7時56分~)。

 世界的バレエダンサー・熊川哲也が率いる『Kバレエカンパニー』の舞台を目指し、バレエ経験のある芸能人がオーディションに挑む姿を200日もの間、追い続けたものだ。

 彼女たちが目指すのは、名作『白鳥の湖』でビッグスワンと呼ばれる2羽の白鳥役。オーディションに勝ち抜くと、11月初旬に開催される『Kバレエカンパニー』の特別公演で踊ることが許されるのだ。

「僕が子どものころ、男の子は野球、女の子はバレエかピアノをやっていたものです。少女時代にバレリーナを夢見ていた女性は多いのではないでしょうか」(江藤俊久プロデューサー)

 同局の人気番組『学校へ行こう!』『ナイナイのお見合い大作戦!』などのバラエティーを手がける江藤Pが5年越しで実現させたというこの企画は、今年の1月からスタートした。

「芸能界でバレエ経験のある方100名以上に声がけしたと思います」(江藤プロデューサー)

 舞台に立つまでに半年のレッスンが必要という条件をクリアしてダンスレベルのチェックを受けたのは、18歳から47歳までの20名の芸能人。タレントの篠原ともえ、女優の有森也実、歌手の八反安未果、お天気お姉さんの真壁京子、出水麻衣TBSアナウンサーらだ。

「事前にバレエのブランク、年齢、芸能界でのキャリアも、オーディションではいっさい考慮しませんとお伝えしていました。それでもかまわないという方ばかり。みなさん、それぞれ非常に熱い思いで、臨んでくださいました」(江藤プロデューサー)

 篠原は朗らかなキャラを封印しての真剣勝負、有森は仮に不合格になっても“私のバレエ愛を表現できればいい”と本気宣言、ローザンヌ国際バレエコンクールに出場しながらも歌手活動に転向した八反は、バレエの師匠に見てほしいという気持ちを強く持っていた。また、モデルのえれなは、姉の能世あんな、妹の香里奈のためにも頑張りたいと思っていたそう。

 20人のうち、3月末のレベルチェックをクリアしたのは10人。その10人が、8月末の最終オーディションまでの4か月間、集中レッスンを受けることになる。

 オーディション合格者はさらにその後、舞台公演までの猛特訓に突入する。熾烈な戦いに勝ち残ったのは、いったい誰か?

「できることならテレビで人気の有名な芸能人をオーディションで残してほしい」(江藤プロデューサー)

 制作者の本音ではそう思っていた。

「それでも僕らのテレビ的な事情は、いっさい鑑みてもらえませんでした(笑い)」(江藤プロデューサー)

 完全ドキュメンタリーになったのには理由があった。

「『下町ロケット』の佃品質、佃プライドじゃないですが、Kバレエさんには日本のバレエ界を牽引している誇りがあります。ですからKバレエの認めるレベルに達していなければ、有名人でも舞台に立つことは不可能なのです」(江藤プロデューサー)

 参加した芸能人のダンスのレベルは、Kバレエ側の想像よりも低かったよう。熊川は、芸能人に対して距離を置くようになっていった。

 フレンドリーに接することはなくても同企画を全面サポート。彼女たちのレッスンを担当したのは、Kバレエきっての名指導者たちだ。プロのレッスンは過酷を極めた。参加者には、本業よりレッスンを優先してスケジュールを組む者も。

「誰かを蹴落としてでも勝ち残る、という感じはなかったですね。肉離れや過呼吸などの不調、疲れ、緊迫感のある空気が続いて心が折れそうになった彼女たちは、互いに慰め、励ましあっていました。ライバルなのですが、同志という感じが強かったです」(江藤プロデューサー)

 オーディションで涙をのんだ者が、まだ残っている仲間を叱咤するシーンもあったという。そして迎えた公演当日。200日にわたって本気でバレエに向き合った彼女たちに、奇跡が起きた。

「非常に素晴らしい舞台で、僕も号泣しました。でも何よりうれしかったのは、公演の後、熊川さんから“思わず、ブラボー! って言っちゃったよ”と言われたことです」(江藤プロデューサー)

 2日前の最終リハーサルの時点でも、笑顔を見せなかった熊川の称賛は、芸能人たちが引き起こしたミラクルなのだ。

「バレエに取り組む芸能人の姿を追ったドキュメンタリーですが、彼女たちの生き方まで浮き彫りにした人間ドキュメントにもなっています。年を重ねると、いろいろなことをあきらめるようになりますが、いくつになっても挑戦できるという希望を受け取っていただければ」(江藤プロデューサー)