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依存症患者に寄り添う家族

 元プロ野球選手・清原和博容疑者(48)が覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕された。誰もが知る有名人の逮捕ということもあり世間を大きく賑わせている。

 薬物使用の実態について調べる中、16歳から40歳まで、クスリを使用していた男性(42)と母親(69)の話を聞くことができた。

「最初は大麻でした。やがて友達と覚せい剤をあぶって吸うようになって、18歳のときにはもう、自分をコントロールできなくなっていました」

 眠れないし、何も食べられない。ただ、クスリだけが欲しい。ほかのやつは欲求をコントロールできているのに自分はなぜできないのか、劣等感ばかりが高まり、そんな自分が嫌いだったと話す。

「ネタ(薬物)ないの、ネタくれ、とまるで物乞い。手元にあればあるだけ使ってしまう。そんな自分が嫌いでしたが、覚せい剤はスーッと落ち着く感じで、嫌なことを忘れられました。高校卒業後、専門学校に通う間はクスリをやめていたんですが、専門学校を卒業するときに“卒業祝いに”注射器で打つようになり再発しました。

 働き出すと仕事場にまで持って行き、トイレで隠れて打ちました。そのころからおかしくなっていった。会社の前に着いても怖くてドアを開けられなくて。最終的に会社を辞めました」

 十分に壊れていたはずだが本人は、「23歳の時です。本当に壊れ始めたのは」と、さらなる悲惨な過去を告白する。

「“誰かにつけられている、盗聴されている”と覚せい剤後遺症を発症してもうダメだと思いました。最終的には覚せい剤でキメて外出。見知らぬ一般人に暴行し逮捕。執行猶予がつき拘置所から出た後は親のすすめで沖縄ダルクに入りました。

 でも1年半入所してから実家に戻ると孤独です。病院への入退院を繰り返してもう回復の道に進まなければと思い自助グループに自発的に通いましたが、5年通っても社会復帰につながらず、不安が蓄積していったんです。そんなとき知人に脱法ドラッグがいいって聞いて、スリップ(再使用)しました。37歳の時ですね」

 危険ドラッグが、今ほど規制がないころのこと。過度の使用で1年間に3回入院し、一昨年の8月には危険な状態に。

「心肺停止状態になりました。もうやめようと思いましたね。そこからクリーン(な身体)です」