元プロ野球選手・清原和博容疑者(48)が覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕された。誰もが知る有名人の逮捕ということもあり世間を大きく賑わせている。
薬物使用の実態について調べる中、16歳から40歳まで、クスリを使用していた男性(42)と母親(69)の話を聞くことができた。
息子の様子をずっと見ていた母親は、逮捕された際には、「これでやっと回復に向かうって、捕まってホッとしましたね」と本心を明かす。
母親も依存症に真剣に向き合い続けた。本を読み、複数の自助グループに参加した。
「当初は息子が回復に向かう時期もあったので、真剣に取り組んでいない時期もありました。でも私が変わる必要があるんだと、通ううちに気がついたんです。未払いの携帯料金を払い、お金を渡すこともありました。
でも入退院を繰り返す息子を見舞う話を聞いた家族会のケースワーカーに、“なぜ本人が招いた結果で入院した子の見舞いに行くの?”と尋ねられ、息子のためにしていた行動が共依存関係にあると気がついたんです」
共依存関係とは、薬物依存症患者の責任を肩代わりして、自己の存在意義を確認する支援者がいることで成立する。結局、依存症患者には支援者に頼ればなんとかなると思わせてしまい、依存症を助長する。
依存症では、物を渡しても、お金から薬物に変わる可能性がある。家族会では、お米を送る場合も(換金できない)500gまでにするようにとの指導があるようだ。
「2年半前に、行き場のない息子が次の仕事が決まるまで泊めてほしい、と連絡が来たんです。でも私は、断ることができた。そこでやっと息子を手放せた。突き放すことも愛情だと気がつくことが、10年以上たってやっと理解できました」
薬物依存を撲滅するための標語に「ダメ。ゼッタイ。」がある。それも薬物使用者の回復を遅らせている、と『日本ダルク』本部ディレクター・三浦陽二氏は話す。
「社会的にダメな人間だと烙印を押されて、回復へ向かおうとしても孤立してしまう。最後は、回復を諦めて薬物に手を染めてしまうんです」
周囲の愛が薬物の循環を断ち切ることを願うばかりだ。帰り道、母親は笑顔で語った。
「つらいことはたくさんあったけど来世でも親子になれたらと思っています。思ってしまったんです、話している息子を見て可愛いなって」