真矢くんへのいじめの内容は、背中をたたく、頭をはたく、肩を殴る、馬乗りになる、ズボンや下着を下ろす、名前を呼び振り向いた瞬間に頬をたたく、プロレスごっこと称して壁や床に押しつける、といったものだった。
真紀さんは「報告書を見るまで、真矢へのいじめは知らなかった」という。
「いじめられていた友人と加害生徒のうち2人はリトルリーグにいて、そのいじめが学校に波及しました。中2のころ、真矢は“あんないいやつをいじめるなんて”と言い、いじめられている友人をかばっていました」
亡くなる直前の5月。いじめがおさまらないため、我慢の限界だったのか、真矢くんは加害生徒のひとりの教科書をカッターナイフで切り刻んだ。その後、名乗り出て、費用を弁償することになった。
担任の40代の女性教師は電話で「積もり積もったものがあったのでは」と真紀さんに伝えた。
「気持ちはわかるけど、やり方を間違えちゃったね。どうして本人に直接言わないの?」 「お母さんは偽善者だ。俺が全部悪い」
この“教科書事件”で真矢くんは不利な立場になる。加害生徒たちから執拗な呼び出しを受け、詰問を受けた。
教科書を弁償した後、「あいつらに何を言っても無駄だ。形式だけ謝っておいた」
と真矢くんは答えた。
「担任からの対応が電話だけというのもおかしいと思いますが、私がもっと酌み取ってあげればよかった。“どうしてわかってくれないの?”という気持ちだったのではないでしょうか」(真紀さん)