高橋学教授

 熊本地震のショックも癒えぬ中、遠く離れた東日本の地下が不気味にうごめいている。東日本大震災から5年。必ずセットでくるとされる“大地震のあとの大噴火”が接近しているおそれがあるという。

「新潟焼山で噴火が始まりました。東日本の火山活動に十分注意する必要があります。いよいよ……の可能性が高いんです」

 そう話すのは、地震や火山、災害史に詳しい立命館大学・歴史都市防災研究所の高橋学教授。いよいよ、とは何を示すのか。高橋教授が続ける。

「地球上で発生したマグニチュード(M)8.5以上の大地震のあとに、大噴火を伴っていないのは2011年3月11日にM9.0を記録した東日本大震災だけです。ほかの10の大地震はすべて約5年以内に近くの火山が大噴火しています。新潟焼山の火山活動が“3・11のセット”の始まりならば、噴煙が上空1万2000メートルに達するような巨大噴火がいくつかの火山で続くはずです」

 新潟・長野県境の新潟焼山(標高2400メートル)の噴火は7日、地元紙などで報じられた。記事のニュースソースは気象庁の発表だった。ごく小規模の噴火で、警戒レベルは「活火山であることに留意」という『1』のまま。噴火日時はわからず、山頂付近で降灰を確認しただけという。

 現在どういう状況なのか。新潟県糸魚川市に聞いた。

「20日現在では落ち着いています。新潟焼山は昨年夏ごろから噴煙が増え、昨年末にその噴煙が高くなりました。今年5月に入って地震が多くなったので上空にヘリコプターを飛ばしたところ、山頂付近の残雪が火山灰で汚れていたんです。

 山頂にいちばん近い民家のある麓の焼山温泉まで約8キロ離れており、噴火警戒レベルが3(入山規制)~4(避難準備)に上がらない限り火砕流はおよばない。とはいえ、自然災害に“絶対”はないので注意深く監視しています」(市・消防防災課)

 火山性地震は5月に入って急増。3月は4回、4月は6回だったのに、5月1日だけで23回観測された。同市などは昨夏からの動向を踏まえ、3月2日に山頂から半径約1キロの入山規制を決めた。

「入山者の安全を考えてのことです」(同課)

 同山の噴火は18年ぶり。1974年の噴火では、山頂付近で登山中の大学生3人に噴石が当たって死亡する事故があった。

 高橋教授は「新潟焼山だけが危ないということではありません」と話す。

「東日本では最近、火山性地震が頻発している山がいくつかある。北から順に雄阿寒岳、雌阿寒岳、十勝岳、秋田焼山、栗駒山、吾妻山、草津白根山、浅間山です。伊豆諸島の三宅島では11日深夜から12日にかけて火山性微動が確認されています。どこか1つが大噴火して終わりではなく、次々と爆発することが考えられます」(高橋教授)