『家政婦のミタ』の脚本家・遊川和彦が描く、特別養子縁組を題材にしたホームドラマ『はじめまして、愛しています。』。ヒロインを演じる尾野真千子とは初タッグ。主演女優にケンカを売ったという“ものいう脚本家”が、その真意を激白した。
■脚本家からの挑戦状!“天才”女優が新境地
子どものいない夫婦が、親に捨てられた男の子をわが子にしようと決断、“本当の家族”になろうと奮闘する物語。ヒロインの梅田美奈を尾野真千子、夫の信次を江口洋介が演じる。
脚本は『家政婦のミタ』『〇〇妻』などの話題作を手がけた遊川和彦。
2年前から特別養子縁組を題材にしたドラマを構想。時間をかけて設定や登場人物のキャラクターを詰めていったという。
遊川は言う。
「企画段階から“新しいホームドラマになる”と直感しました。人が本気で相手にぶつかっていって愛情を示すのは、とてもわかりやすいけれど、同時に難しいことでもあります。
今の時代は情報過多で、子育てに自信をなくしている親もいるでしょう。特別養子縁組のための試練を乗り越えていく美奈や信次、男の子の姿から、何かを感じ取っていただければ」
ストーリーを考えるうえで、養子縁組を支援する関係者に取材した。
「養子になる子どもがわざと反抗的な態度をとったり甘えたりして、試す行動をするそうです。子どもは本気だから親になる側もヘトヘトになるし、投げ出したくもなる。本気のぶつかり合いだからこそ、そこにドラマがある。本気で人に愛を伝える戦いを見てほしいです」
本作では、特別養子縁組を望む理由で、最も多いケースの“不妊”を避けた。
「不妊から養子を望むのは、その夫婦の意志によるもの。僕は運命的な出会いを描きたかった。そのため、監禁されていた子どもがさまよい、惹かれるように向かったのは、美しいもののところだった。その美しいものがピアノの音色であり、弾いている美奈の容姿や心の美しさも要因になった」(遊川)
尾野演じる美奈は、プロのピアニストとして認められるまで子どもはつくらないと決めていた。国際コンクールでの入賞を目指しているが、夢は叶わず49連敗中。でも、人前では虚勢を張って笑顔を絶やさない。
「尾野さんは才能がある天才肌の女優。今回、僕は彼女が怠けないように“違う芝居を見せてみろ”とケンカを売ったんですよ(笑)」(遊川)
感情表現豊かな尾野に対して遊川が要求したのは、“感情を出すな”という点。
「自分の気持ちを表情に出せない人を演じてくれと言っています。“面倒くさい”とか、ブツブツ言っているけれど、今まで見たことのない、上品な雰囲気を漂わせています。下町の人懐っこいお姉ちゃんのような役が多い彼女が、清楚で優雅な美奈その人になりきっています」
苦手なピアノ演奏も人知れず猛特訓しているそう。
「人前で努力している姿を決して見せない。素直じゃないんですよ。僕も同じなので気持ちはよくわかりますが(笑)」(遊川)
■江口のハイテンションが現場を明るくしている
山田兼司プロデューサーによると撮影現場は遊川をはじめ、全員が一丸となり、活気に満ちている。
「要求は難易度が高いものばかりですが、尾野さんはどこかうれしそうです。遊川さんと話した後に尾野さんの演技が圧倒的に変わって、どよめきが起こることもしばしばです」
美奈の夫の信次は底抜けに明るい男で、江口がかつて演じた『ひとつ屋根の下』のあんちゃんを彷彿とさせる。
「江口さん演じる信次のハイテンションが撮影現場を明るくしてくれています。毎回テンションを上げるのが大変そうですが、信次になりきって頑張ってくださっています。内に秘めた葛藤がありながらやせ我慢している美奈が“静”なら、信次は“動”。ポジティブにどんどん動き回るので、見ているほうも楽しい気持ちになると思います」(山田P)