■カラオケで夫婦のデュエットも
何よりも“寿司が大好き”と公言していた巨泉さんが、地元で通っていたのが東金市内にあった『明美鮨』。現在は閉店し別の場所で『居酒屋あけみ』を切り盛りしている女将の椿悦子さんは、彼が初めて来店したときの様子を昨日のことのように覚えている。
「巨泉さんが59歳のとき、初めて来られたんです。まず、運転手さんが“空いてますか?”ってお店に入って来られて“大丈夫ですよ”って言ったら、巨泉さんがいらっしゃったのです。あとで聞いたのですが、こちらに引っ越して来られたときに、家から向かって近くの寿司屋さんに行こうということで、飛び込みでウチに来られたそうです」
それからは、千葉の自宅にいるときは週に1回以上は来店。わさび入りのかんぴょう巻やマグロのづけ、コハダなどが特に好きだったという。
「元気なころはワインが大好きで、お好きなワインを持ってこられて、ご夫婦で1本空けていました。奥さまは看病で本当に大変だったようですが、苦労しているところは微塵も見せなかった。
14歳差のご夫婦でしたが、やっぱり最後は巨泉さんは奥さまの言うことを聞いてましたよ。そういう意味では奥さまのほうが強かったかな(笑)。巨泉さんは奥様のことを“スー”って呼び、彼女は巨泉さんのことを“ボー”って、子どもみたいに呼び合ってましたね」
だが、明美鮨は5年ほど前に店を閉めてしまう。
「私もいろいろありまして、巨泉さんにご報告もせずに店を閉めちゃったんです。それで、あとで怒られちゃったんです。“なんで相談しなかったんだ”って。とっても思いやりのある方でしたからね」
ゴルフやカラオケなど、家族ぐるみで付き合いのあった椿さん。新しい店にも、巨泉さんはたびたび来てくれた。
「巨泉さんはジャズや演歌など、なんでも歌いましたし上手でした。元アイドルですから奥さまもうまいですし、ご夫婦のデュエットは最高でしたね。
私が最後にお会いしたのは、今年の3月ごろ。店にごはんを食べに来られました。のどの手術をしているので、のどごしのいいものをというので、うどんを出しました。でも、食べられたのはほんの少し。ワインもグラスに1、2杯飲まれました」
今回、彼のゆかりの地を訪れると、そこには必ず奥さんと一緒の姿が目撃されていた。
「全盛期にセミリタイア宣言した本当の目的は、寿々子夫人と過ごす時間を大切にしたかったから。それほど、夫婦ふたりの時間を大切にしていたんです」(芸能プロ関係者)
テレビの楽しさを世に示した天才と、彼を献身的に支えた妻。そこには、深い愛情物語が存在していた─。