経験を共有し、互いに支援する“仲間”の重要性
小児がん家族と患者の看護を専門とする東海大学の井上玲子教授は、ピアサポーターの重要性を訴える。
「ピアとは“仲間”という意味で、ピアサポーターは経験を共有し、互いに支援するものです。がんの悩みはなかなか人に共有してもらえない。そこで、同じように苦しんでいる人を助けられる家族会の重要性が高まります」
だが、訓練を受けていない人が患者や家族を支援するのは難しい。家族会に呼びかけ、2013年に研修プログラムを作成した。現在は年2回、研修会を開催する。研修を経て、家族会を主催する人もおり、着実に成果をあげている。
「外来では聞けないような悩みも、患者・家族会では、共有することができる。子どもの食事、進学、不妊、就職のことまで、実際の経験から、生活に密着した具体的なアドバイスがもらえます」(井上教授)
「思い出が作れたことに感謝しています」
苦しい闘病生活の中で楽しい思い出を作ろうと、2010年、NPO法人ジャパンハートが『スマイルすまいるプロジェクト』を立ち上げた。小児がん患者とその家族の旅行をサポートするもので、2泊3日以内の国内旅行を、年間8~10件、実現している。憧れのプロ野球選手やサッカー選手に会いたい、という夢を叶えたこともあったという。
「お子さんを亡くしたご両親からは、“私たちだけでは実現できませんでした。思い出が作れたことに感謝しています。ありがとうございます”とご連絡を必ずいただきます。病気だけでなく家族の心のケアにも取り組んでいくことが大切だと考えています」(『スマイルすまいるプロジェクト』推進チームの佐藤抄さん)
これら以外にも、奨学金制度、低額宿泊施設、医療用かつらを提供する団体など、小児がんをめぐるサポートの輪は広がり続けている。
■小児がんの子どもと家族を支援する活動
【ゴールドリボン・ネットワーク】
遠方の病院で受診するための交通費支給、高校・大学進学のための奨学金制度などを設けている。
【がんの子どもを守る会】
電話などによる個別相談に対応しているほか、療養費援助や親の会への資金援助を行っている。
【アートネイチャー「Little Wing Works」】
【アデランス「愛のチャリティ」】
4歳から15歳の病気や治療、事故やケガなどにより脱毛した子どもにオーダーメード、レディーメードのウイッグを無償提供する。
【ジャパンハート】
18歳以下の小児がん治療中・治療終了後1年以内の子どもを対象に旅行や思い出づくりを支援。
【メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン】
3歳から18歳未満の難病と闘う子どもの夢をかなえる活動を行う。
【宿泊施設】
全国各地に病気の治療を行う患者・家族のための低価格宿泊施設がある。1泊1000円程度から宿泊可能。日本ホスピタル・ホスピタリティ・ハウス・ネットワークのホームページから、全国の宿泊施設を探すことができる。
JHHHネットワーク(http://www.jhhh.jp/)
※JHHHネットワーク事務局は、認定NPO法人ファミリーハウスが運営している。