もうひとつ接待でバレるのは、あなたが「文化的・宗教的な配慮」と「最低限の教養」を持ち合わせているかどうかだ。
【3】「文化的・宗教的な配慮」ができるか
いろいろな国の人との接待では、多様な文化と宗教に対する理解と配慮が不可欠になる。日本にずっと住んでいると気づきにくいが、宗教を信念のコアにもっている人は、ビジネスの世界にも大勢いる。
以前、香港でユダヤ教徒の大口投資家を接待する機会があったが、間違って秘書さんが広東料理のお店を予約してしまった。広東料理というと海鮮物で有名だが、ユダヤ教の人たちは魚介類を食べられないのだ。
あわてて私がコースから魚介類を取り除くように頼むと、なんとビックリ、メインのロブスターやホタテ貝を取り除いた、付け合わせのブロッコリーばかりが出てきて、お客さんが怒ってしまったのだ。
大急ぎでコースにはない別の料理を頼んだので事なきを得たが、そのときの凍りついた怒りの表情は「食べ物のセレクションをなめたらアカン」と深く肝に銘じるきっかけとなった。
これだけではない。豚肉をいっさい口にしないイスラム教徒の中には、「豚肉料理をよそったスプーンで、ほかの料理を触ってもダメ」という厳しい人もいる。モルモン教徒にとっては、アルコールはおろか、コーラも茶もカフェインが入っているのでNGなのだ。
食文化への理解はその人の全人格への尊重を示すことにもなるので、十分に配慮したい。
「仕事の話しかできない人」は軽く見られる
【4】「幅広い教養・話題」で相手を楽しませられるか
もうひとつ、接待でバレるのは「知的な人を楽しませるだけの教養」があるかどうかだ。
もしあなたの接待相手が「二流のお客さん」なら、接待が始まるや否やパンツ一丁になろうが、関係各位の了承があるならいいだろう。
しかし、「一流のお客さん」が相手の場合は、ウィットと幅広い分野の豊富な知識、ユーモアのセンスで、忙しい接待先を魅了しなければならない。
私の参加した無数のディナーミーティングでも、偉い人が世界各国から集まって何を話すかと思いきや、ひたすら歴史や美術、趣味の話に終始したことも多かった。
ビジネスパーソンとしての価値は、ビジネス以外の場でにじみ出る教養やマナーによって値踏みされる傾向にある。実際、グローバルビジネスで成功する人の中には、経済や金融専攻ではなく、哲学や宗教、英文学を専攻したような人が意外にも多い。
けっして仕事の話ばかりするのではなく、自分の人間的な深みや面白さを伝えて「この人と一緒にいると楽しい」という感覚を相手に叩き込むことが求められる。そうやって構築されたプライベートな関係が、ビジネスの関係に発展していくのだ。
そのためにも、日ごろから勉強に励んで視野を広げつつ、歴史的・哲学的・文化的な見識を高めておくことが重要になる。くれぐれも「社交や会食の場で、仕事の話しかできない人」は"教養がない”と軽く見られることを忘れてはいけない。