「劣化が自然に感じてもらえれば安心」
昨年公開の『日本のいちばん長い日』で昭和天皇の役を演じ、賞レースを席巻。'08年には自ら企画&主演した『おくりびと』がアカデミー賞外国語映画賞を授賞。どの作品でも唯一無二の存在感を放つが、出演本数は決して多くはない。作品を決めるときの基準は?
「なにか強烈な思いを持っている作り手に刺激されて、その駒になりたいという基本姿勢があります。それでいて、タイミングが合うかどうか。生活とのバランスもあるし、不器用だから同時に何本も抱えられないんですね。
あと、私の実家は埼玉県で農業を営んでいて。そんな育ちだから、いざというときには贅沢はできないけれど、米も土地もあるから食うには困らないよな、というのんびりとした思いがあるのかもしれません」
50歳を迎えた本木の顔には、おでこのシワが濃く刻まれ、グッと渋さが増したように思う。それを率直に伝えると……、
「あっ、だと思います。若いときはよく引力に負けずに目も頬も吊り上がっていたなと(笑)。でも、それなりにコンスタントに表に出させていただいているぶん、老けも徐々に刷り込まれているので、劣化が自然に感じてもらえれば安心ですね。あまり時間をあけちゃうと、急に老けたとか言われますから(笑)」
変わりゆく自分を、さも楽しげに、ユーモラスに話す。年輪を重ね、ますますカッコよく、美しく進化していく本木雅弘。いつまでも、その噓のない顔を見ていたい――。