大人の年齢のふたりだからこそ、そんな試練があっても乗り越えられるということだろう。このように、梨園の妻は陰ながらではあるが、力強く夫を支えなくてはならない。
「役者が芸の道だけを考えて動くことができるよう、妻がその他の雑務をこなし、夫を立てなくてはなりません。ただ、芸能人が梨園の妻になるということだけでも、これまでのイメージがあるぶん目立ってしまうんです」
小林麻央も、市川海老蔵に嫁いだ当初は多くの洗礼を受けた。
「舞台の際にロビーでの挨拶で青い着物を着ていたら“ドラえもん”呼ばわりされたなんて報道もありました。麻央さんも結婚後、ニュースキャスターをしばらく続けていたため、一部ではひんしゅくを買っていたのでしょう」
しかし、麻央は仕事をセーブし、海老蔵の母である希実子さんにしきたりなどを教わりながら、メキメキと梨園の妻としての頭角を現した。
「女優やタレントというプライドを捨てて、自分は裏方に徹するということは、簡単なことではないと思います。ただ、その覚悟がなければ、頭を下げて人に教えを請うことはできません。麻央さんは着物のセンスもよく、いつも控えめに海老蔵さんを支えており、評判も上がりました」
世継ぎを産むことも、梨園の妻が背負わなければならない仕事のひとつ。
「中村勘九郎さんの妻の前田愛さんは、ふたりのお世継ぎを出産しています。子どもに日本舞踊や歌舞伎のお稽古もつけなくてはなりませんので、今がいちばん梨園の妻として忙しい時期でしょう」
このように多くの仕事をこなしても、いつも謙虚でこまやかな気遣いができなくてはならない。紀香は、そんな梨園の妻の中で、いちばん後輩になる。女優の仕事も続けると宣言した以上、どちらもおろそかにしない覚悟を決めているのだろう。
「紀香さんは時間さえあれば、大阪の愛之助さんの義母のもとに通い、梨園妻修業をしているそうです」(前出・スポーツ紙記者)
梨園の妻と女優というふたつの矜持を、紀香は示してくれるに違いない。