「哀しい面白さが僕は大好き」
筋立ては事前に考えない、というつぶやきさん。
「僕は書きながらどう行くかな、っていう書き方なんですけど、そうすると物語が進んで、ラッキーラッキーその調子、って書けるときがあるんです。ああ話が浮かんでくる、調子いいって自分に言い聞かせてると、“あ、こんな人が出てきちゃった”という登場人物が出てきたりするんですよ。そうするとどんな人なのかという設定をしてましたね。
でも複雑な設定はないですよ。あそこでああだったから、ここでこうなる、っていう辻褄合わせなんてできないし、そんなの自分も忘れちゃいますから(笑)。ずっと書いてる職業作家さんだったらいいですけど、舞台とかほかにもいろんな仕事があるから、その間に忘れちゃうんですよね。1週間空くと億劫になって、小説の入っているパソコンのファイルをクリックしたくなくなりますから。無人島で拘束されて“書け”って言われたら、一気に書けるんでしょうけど(笑)」
謙遜するつぶやきさんですが、空回りし続けていた春男の物語は大きく展開し、物語の見え方が一気に変わるエピソードがあったり、思いもしない状況へ追い込まれたり、笑ってホロリとさせられるなど、最後の最後まで目が離せません!
「哀しさがあって、哀愁があって、なんかたまらないね、っていう哀しい面白さが僕は大好きで、そういう話を書けたらいいなと思ってるんです」
ちなみに本書には『イカと醤油』の親子もコッソリ登場していますので、ぜひ探してみてください!
そして奥様の尻に敷かれているお父さんのことを「もうちょっと考えてあげて」と言うつぶやきさん。
「お父さんは意外と哀しいんだよ、でも頑張ってんだよ、ってところをわかってあげてほしいですよね。普段は何も言わないけど、実はいろいろと考えてるっていう旦那さんはいっぱいいると思うんですよ。だから“読んだら、勇気出るかもよ”って、奥さんがこの本を渡してあげてくれたらいいかも。とにかく最後まで読んでもらえたら、オッケーですね!」
<プロフィール>
つぶやき・しろー
お笑い芸人。1971年、栃木県生まれ。愛知学院大学文学部心理学科卒。日常のあるあるネタをつぶやく芸風で人気に。2010年よりツイッターを開始、あるあるネタをほぼ毎日1ネタつぶやいている。'11年『イカと醤油』で小説家としてデビュー。その後、『つぶやき隊』などの絵本も出版している。ナレーター・俳優としても活躍中。