古舘プロジェクト所属の鮫肌文殊、山名宏和、樋口卓治という3人の現役バリバリの放送作家が、日々の仕事の中で見聞きした今旬なタレントから裏方まで、TV業界の偉人、怪人、変人の皆さんを毎回1人ピックアップ。勝手に称えまくって表彰していきます。第9回は樋口卓治が担当します。
リリー・フランキー 様
今回、私が勝手に表彰するのはリリー・フランキーさんである。
リリーさんの魅力を言葉にするのは難しいが、書かずにいられない憧れの人だ。
養老孟司さんの大ベストセラー『バカの壁』に「y=ax」についての面白い説明がある。「a」は興味の値、「x」はその人の発する言葉の値。この掛け算が人の心に刺さる値になるという。
どんなにいいことを言っても、聞く相手がその人に興味がなければ、伝わる値は低い。大学の講義で妊娠から出産までのVTRを女子に見せると、自分に関わるので興味津々、yの値は大きいが、男子に見せてもさほど興味はなくyの値は低かったというデータを載せていた。
僕なんかはリリーさんへの興味が大きいので、ボソっと言った一言に「深い!」と思ってしまうのだ。
イラストレーター、作家、俳優とリリーさんはいろんな顔を持つが、僕は人間性に惹かれる。国語の時間に習った小林一茶に妙に惹かれたような感覚に似ている。
心に残る言葉がある。
「仕事と生業の違いはね、お百姓さんが大根を作る。その大根を100円で売る。これが生業。その大根を作るにあたり、道具の手入れをしたり、大根を美味しくする勉強をしたり、お金にならなくとも一生懸命時間を費やすことを仕事っていうんだ」
セクシーで低い声でそんないいことを言われたらジーンときてしまう。女性でなくても落ちてしまう。
今もテレビ番組を作るとき、この言葉を大切にしている。