「医療用麻薬が、悪いイメージとして使われてしまうのが非常に残念です」
と、前出・大津医師。
「医療用麻薬を違法な麻薬と同じように考える方は多い。だから患者に投与すると(痛みが消え)こんなに効くんだね、しかも意識も清明にちゃんと話せるじゃないかとみなさん驚かれます。適正な量を適正に使用すればさまざまな痛みに対する有効性と安全性は確立されているんです」
アメリカ疾病対策センターの2014年の統計では医療用麻薬の過剰摂取による死者は2万8647人にのぼる。
「医療用麻薬による死者がアメリカで多いのは、不適切で過量な使用が原因です。トヨタの元取締役が医療用麻薬を日本に持ち込み問題になったときも、ひざの痛みで処方されていました。日本では処方しないような理由でも米国では処方することがある。
私の経験上、日本では医療用麻薬が原因で亡くなった患者さんは皆無です。薬物の乱用が問題となっているアメリカだからこそ“大麻程度”なのかもしれません」
と大津医師。だが、医療用大麻の可能性を否定はしない。
「医療用麻薬と麻薬が違うように、医療用大麻と大麻を分けて考えることが必要です。アメリカの事例では、HIV患者の食欲不振が改善されたなど、医療用大麻の有用性が示唆されている分野があるので、可能性はあるわけです。
ひとつの論文で、抗腫瘍効果があるとか、線維筋痛症に効果があるとか即断せず、総合的な判断から冷静に見ていくことが必要ではないかと思うわけです」