28年演じた役づくり“鬼平”=吉右衛門
28年にわたって同じ役を続ける大変さとは?
「おまさは36歳の設定。こちらは年をとるけれど、役は年をとらない。10年前ぐらいから、身体がちょっとずつきつくなってきました。密偵は中腰でしゃがむことが多くて、足がふるえちゃう。密偵の仲間と“きている?” “足がね” “やっぱり”が挨拶になりました(笑)。男性の役者さんは年をとっても、太っても、それなりに見てもらえますが、私は太らないようにしていました。あとは照明さんやスタッフのみなさんのおかげです」
吉右衛門は2011年に人間国宝になった。その吉右衛門と長く共演してきて、どんなことを学んだのだろう。
「その一挙一動から目が離せません。吉右衛門さんはきめ細かい芝居をされ、私のようなものの芝居でも受けて返してくださるのです。手を抜かず、まじめで、きちっと芝居をやられる。やることは大胆でも、心のきめ細かさがある鬼平のような方です」
それならば撮影現場は、楽しく和やかだったのか。
「楽しいなんて! 長くみんなでやってきましたが、和気あいあいでもなく、むしろ厳しかったです。ゲストのベテランの役者さんが“ものすごく空気が重いね”って(笑)。それだけ全力で作っていましたから」
ファイナルは、28年間の集大成。前編『五年目の客』(12月2日金曜夜9時~)は旅籠の女将(若村麻由美)が、5年前に遊郭で働いていたときの客と偶然、再会したところから話は始まる。
後編『雲竜剣』(12月3日土曜夜9時~)は鬼平をつけ狙う刺客(尾上菊之助)が現れ、その刺客は残忍な凶賊であったということで、こちらは鬼平の真骨頂の立ち回りがたっぷり。どちらも見逃さないで!
■吉右衛門“好物”五鉄の軍鶏鍋
ドラマには毎回のように軍鶏鍋を食べるシーンが登場する。鬼平はいつもおいしそうに食べているが、あれは演技ではなく“素”で本当に食べているそう。当初は京都の撮影所に東京から専門の料理人を招き作っていたが、その後はレシピと材料が送られてきて、スタジオの中で調理。撮影のときには、いい匂いが立ち込めて、生唾ものだったそうだ。もうあの軍鶏鍋も食べられないのですね、鬼平さん!