また、井伊家と家康の関係性にも注目です。武田家が滅びたときに彼らの旧臣を率いることになったのが井伊直政です。家康は武田家を非常にリスペクトしていたので彼らを再雇用し、井伊家と併合させてしまう。直政が武田家ゆかりの“赤備え”と呼ばれる鎧(よろい)をまとうのもそういった理由からなのですが、いうなれば家康はまったく新しい井伊家をプロデュースするわけです。
同時に、直政は百戦錬磨の武田軍のサポートを受けるわけですから、いかに直政が家康の寵愛(ちょうあい)を受けていたかが推測できます。譜代大名でありながら、直政の子・直孝の時代には30万石を超える大大名にまで出世するなんて耳を疑うレベル。
いかにして直政が家康に気に入られていくのか? そのあたりもこのドラマの大きな見どころといえるでしょうね」
<プロフィール>
ほんごう・かずと◎1960年、東京都生まれ。東京大学文学部・同大学院で日本中世史を学ぶ。日本中世政治史、中世古文書学、中世寺院史を専門とする一方、アイドルに詳しいという一面も。東京大学史料編纂所の助手・助教授などを経て現職。2012年のNHK大河ドラマ『平清盛』で時代考証を担当。現在はテレビをはじめ、各種メディアでも活躍中。近著に『戦国夜話』(新潮新書刊)がある。
※『週刊女性』2016年12月20日号より