【うなぎ】調理法の裏に隠された土地柄

 東西のうなぎの大きな違いは、さばき方と蒸す工程の有無。その理由を、日本の食文化に詳しい日本フードアナリスト協会理事長の横井裕之さんに聞いた。

「関東では江戸時代は武士社会でしたから、“腹開きにするのは切腹を連想させて縁起が悪い”と背開きが好まれたそうです。一方、関西の商人文化では“お互いに腹を割って話そうではないか”といった意味から腹開きにしたようです」

関東は金串が使用されることが多く、関西は木の串が一般的
関東は金串が使用されることが多く、関西は木の串が一般的
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 関西のなかでも特に食文化の発祥の地である京都中心部は海から離れているため、傷みやすい魚介類には、とにかく火を通す習慣があった。

「関東では人口が急激に増えた江戸時代、料理を素早く提供する工夫がされました。あらかじめ白焼きをして、箱の中で蒸らしておいたうなぎにタレをつけて焼いて出せば調理時間が短縮でき、ふっくらやわらかく仕上げられたのです」

 また肋骨のないうなぎを腹開きにするには、料理人の技術が求められ、背開きのほうが手早くさばけるという事情もあったようだ。

【卵焼き】東は「厚焼き」西は「だし巻き」

 見た目は同じに見える東西の卵焼き。いったい、どんな違いやこだわりがあるの?

「関東の料理は砂糖を多く使い、関西の料理はだしを大切にするのが特徴です。卵焼きも同じで、関東ではだしのほか砂糖を入れて焼いた濃厚で甘みの強いものが好まれます。関西では砂糖は入れず、卵にだしのみを混ぜて焼きます」

 そう話すのは前出・横井さん。

 関東の卵焼きは、江戸前寿司のつまみやネタとして作られたのが起源ともいわれている。ボリュームのある厚みと甘い味つけは、確かに、お酒や酢飯と合うように工夫されたとも考えられそう。

 卵焼き器も関東型と関西型などと呼ばれ、それぞれ異なる特徴が。関東型は1回で2つ折りにしやすいよう、ほぼ正方形。これは魚のすり身を入れた伊達巻きなどを焼くのにも向いているから。関西型はたっぷりだしを入れた卵を何度も返して、ふわふわした食感に仕上げていくため、縦長の長方形になっている。