─橋本さんの著書のもとになった連載は'70年代後半だが、当時から「譲位」のことについて触れている。
橋本「公務というのは時代によって変化するものです。例えば陛下が即位したときよりも外国との国交が増え外国から日本へのアプローチが多くなり、新任大使の信任状奉呈も膨大な数です。
しかし、陛下は決して“公務を削減しろ”とはおっしゃっていない。美智子さま(82)に結婚を申し込むときから“すべてにおいて公務が優先する”と、口を酸っぱくしておられました。
つまり、公務などの行動あってこその象徴天皇であるという意識が強く、それが年齢や肉体的衰えで難しくなったので、若い世代に譲りたいということなのです。公務が嫌になったとか、しんどいからということではありません」
渡邉「陛下の生前退位は、両陛下の“終活”の集大成とも言えると思います。
両陛下が事前に一線を退いていれば、昭和の大喪のときほど葬儀も大規模にはならないと思いますし、国費の負担も減ると思います。お入りになるお墓の縮小化も、すでにお決めになっています。
陛下のおことばでは、ご家族への負担も考慮していましたが、長期療養が続く皇太子妃雅子さま(53)にかかる負担も考慮されたのではないでしょうか」
─陛下の退位については、一代限りの特別措置法と、皇室典範を改正し恒久的なものにするべきとの意見も出た。
渡邉「陛下の生前退位に限っては、今回は皇室典範改正には踏み込む必要はないと私は思います。陛下から“SOS”が出されたということで、速やかにそれに対処するべきです。まずは、陛下に限り譲位していただく特別措置法でいいと思います」
橋本「私は特措法で処理する問題ではないと思います。陛下が身を引かれた後、男性皇族は4人で、1人は未成年です。先細りの皇室に繁栄していただくために、不備のある皇室典範を改正すべきです。
9条を含め憲法改正を目指す政府の意向は、平和を愛し、現在の憲法を護持する天皇のご意思と真っ向から対立しています。政府は陛下を、宙ぶらりんの存在にしようと図っているようにみえます。
天皇は日本という国家の根幹ですから、その天皇の意向を聞かないことは、国のありようを真剣に考えていないということだと思います」