魚類学者でもある天皇陛下は、帰国後、当時のお住まいである東宮御所でそのティラピアを繁殖させ、翌年に50匹をタイに寄贈されたという。
「それらをプミポン国王が宮殿の池の中でさらに繁殖させて、何十万匹にしてタイ全土に配られたのです。
今では、そのティラピアは『プラーニン』と呼ばれていて、タイでは一般的な食用の淡水魚として普及しています」(小林さん)
美智子さまも、シリキット前王妃(84)との間に“ファッション”を通しての「思い出」がある。
元日本テレビ記者で'64年のタイ訪問に同行した小木裕さんも当時を懐かしむ。
「両陛下が、メオ族が住む地域に行かれたときです。この日はプライベートだったので取材設定はなかったのですが、私は記者団の団長だったので同行を許されました。
美智子さまとシリキット王妃は同じ民族衣装を着て、少数民族の暮らしぶりを仲よく視察されていました。タイ王室にとって皇室は親戚みたいなものだと思いますよ」
黒地に赤や青の刺しゅうが施されたタイコットンの衣装を、お召しになっていたという美智子さま。
そのご縁はのちまで続き、前出の櫻田さんは、こんなエピソードを披露する。
「シリキット王妃が担当している王室プロジェクトの中には、布を作る仕事の就業支援もあります。
'93年に日本でその展示会が開かれ王妃が訪日された際に、美智子さまは王妃から説明を受けられたそうです」
美智子さまは、そんな半世紀以上前の魚と衣装の美しい色合いの記憶をたどりながらシリキット前王妃にお悔やみを述べられることになる。