「僕は、落語界の客寄せパンダになりたいんですよ」
そう熱く語るのは、笑顔が似合う林家木りんだ。
192センチと落語界一の長身。それもそのはず、彼の父親は、秋田県出身の元大関・清國。どうりで色白。これは「らくご女子」が放っておくはずがない。
「でも、一昨年まではブームという感じじゃなかった。昨年の春、『笑点・若手大喜利』に出演してから、女性誌の取材やテレビ出演が増えてきました。やはり『昭和元禄落語心中』の影響も大きいでしょうね」
子ども時代の木りんの夢はプロ野球選手。中学では相撲にも取り組むが、高校に進学すると、芸能界に憧れ、モデルの仕事もするようになる。そんなとき、「学校寄席」に招かれたのが、師匠となる林家木久扇さんだった。
「きっとつまらないと思ってたのに、師匠の話は衝撃的におもしろかった。いま考えると落語ではなく漫談でしたけど(笑)。その後、テレビで柳亭市馬師匠が相撲の行司のまねをやっているのを見て、“落語は何をやってもいいんだ”と思った。そんな自由な落語をやりたい」
そう決意し、父の友人だった木久扇師匠に入門。高座名の「木りん」は、背が高い「キリン」、そして縁起がいいとされる「麒麟」からきている。
それから4年半の長い修業を経て、ようやく二つ目に昇進する。
「上の先輩が昇進にしくじったおかげで前座の期間が延長。でも、その期間があったから、落語の技量、演目の数、自信もついてきて、ベテランの師匠たちの動きや振る舞いを学ぶ余裕も出てきた。あの時間があったから今回のブームに乗ることもできたと思います」