古舘プロジェクト所属の鮫肌文殊、山名宏和、樋口卓治という3人の現役バリバリの放送作家が、日々の仕事の中で見聞きした今旬なタレントから裏方まで、TV業界の偉人、怪人、変人の皆さんを毎回1人ピックアップ。勝手に称えまくって表彰していきます。第14回は山名宏和が担当します。

春風亭昇太 様

 今回、勝手に表彰させて頂くのは春風亭昇太さんである。

春風亭昇太

 昨年5月、昇太さんが『笑点』の6代目の司会になると知ったとき、世間も驚いたが、僕と近所のみんなは世間の7倍は驚いた。昇太さんは僕の住む街の人気者だからである。

 近所の飲み屋に、昇太さんはよく出没する。芸人の中には、テレビや舞台で見る姿と普段の様子が大きく異なる人もいる。だが、昇太さんに限ってはそんなことはまったくない。いつ会っても『笑点』で見るあのままだ。

 一緒の席で飲んだことも何度もある。昇太さんの話が面白いのはもちろんだが、まわりの人の話も拾い、いじってくれるので、笑いが絶えない。とても楽しい時間を過ごすことができる。

 特に僕が好きなのは、昇太さんの隣に弟弟子の春風亭柳好さんがいるときだ。柳好さんはまだ40代後半なのだが、57歳の昇太さんより年上に見える。昇太さんのおじさんのようだ。そしてすぐ、とろとろに酔っ払う。そんな老けた弟弟子がまわらぬ呂律で「兄さん兄さん」と甘えてくるところを笑顔で容赦なくツッコむ様は、まるで昭和のコントである。

 昇太さんのサービス精神が発揮されるのは、喋りだけではない。近所にフリードリンクならぬ「フリーたこ焼き」を出す店がある。カウンターにたこ焼き器があり、チャージ代だけで、たこ焼きが食べ放題。いつもは店主が焼いてくれるが、一人で切り盛りしているので、手がいっぱいの時は、代わりに常連が焼くこともある。

 ある時、夜の遅い時間、その店に入って驚いた。カウンターでたこ焼きを焼いていたのは昇太さんだった。他の常連たちが戸惑う中、「僕、こういうの得意だから」と座布団の代わりに、焼きたてのたこ焼きをみんなに配っていた。

 街のみんなが昇太さんを好きになるのも当然である。いかに地元で愛されているか。それを象徴する出来事があった。

「ヘンな女が来て、昇太師匠のことを嗅ぎ回っている」