新政権の誕生から10日あまり、早くも“トランプ砲”が炸裂している。
ドナルド・トランプ氏は公約どおり、米大統領の就任3日目にはTPP(環太平洋経済連携協定)からの“永久離脱”を宣言。自国の産業や雇用を守るため外国製品に高い関税をかけると警告するなど、「アメリカ・ファースト」を前面に打ち出している。それを受け1月25日、米ダウ工業平均株価は史上初の2万ドルを突破。好況に沸いている。
一方、日本ではトランプ氏への期待感から円安株高が続いていたが、大統領就任を境に相場は乱高下。先行きの読みづらい状況だ。
経済アナリストの森永卓郎さんが解説する。
「株高は勘違いによるバブルだったんです。トランプ氏の過激発言はあくまで選挙戦略で、大統領に就任したら、まともな政策をとって日本にもやさしくしてくれるだろうと考えるエコノミストもいましたが、私の持論は“人間の性格は直らない”。
実際に選挙中から中国、日本、メキシコの名を挙げて、“アメリカに悪い貿易をしている。正さないといけない”と主張し続けていました」
日本への影響は円や株価だけにとどまらない。トランプ大統領がツイッターでトヨタ自動車が進めていたメキシコへの工場新設計画を「ありえない! アメリカに建設するか巨額の関税を払うか、どちらかだ」と迫るやいなや、トヨタはアメリカへ、今後5年間で100億ドルを投じ米国内工場で400人の現地追加雇用も行うと発表。こうした動きは、ほかの日本企業にも広がる恐れがある。
加えて、「円高への誘導も明らか」と森永さん。輸出頼みの日本経済には打撃が大きい。貿易では、TPP以上の悪条件を突きつけてくるだろうと予測する。
「トランプ大統領がTPPではなく“2国間の経済連携協定を目指す”と言っている意味がわかりますか? 1980年代〜'90年代に、アメリカが日本に対して市場開放を要求してきたのとまったく同じことをしようとしているんです。牛肉やオレンジの輸入問題、覚えていませんか?」
ネゴシエーション(交渉)&ディール(取引)。それがトランプ大統領のやり方。
「でも、実態は“脅迫”と“強要”。貿易条件は悪くなり為替も円高に振れていくと思います。日本経済は悪化し、デフレに舞い戻り給料は上がらず、失業率も上がっていくでしょうね」
家計への厳しさは増すばかり。とはいえ節約には限界が。守るだけでなく、いかに増やすかという攻めの姿勢も必要な時代なのだ。
そんな'17年に、今よりもお金持ちになるためには、どうしたらいい?
「基本的には預金をしても金利がつかないことは、みんなわかっていると思います。今の定期預金の金利は0・01%くらい。手数料を1回払ったら、利息なんて吹っ飛んじゃう。金利を狙うよりも、コストを下げるほうが圧倒的に有利です。庶民に唯一、残された高利回りの運用は、個人型確定拠出年金(イデコ)でしょう」
社会保険労務士の北村庄吾さんも、
「下手な運用よりも、制度の活用です。イデコにしろ、個人年金にしろ、みなさん、制度を全然ご存じないんですよね。今、国は“節税メリットをあげるから、自分たちで老後資金を貯めてくださいね”というスタンス。仕組みを勉強しないと、リターンを手にできない時代になったと言えます」
ファイナンシャルプランナーの山口京子さんもイデコ推し。
「とはいえ、その前に自分のお金習慣を変えないといけないですね。定期預金に金利が7%もついていたのはバブルのころ。そんな時代と今は全然違います。昔のままじゃダメなんです。お金持ちになるためには、まず、昭和のままだった脳ミソを、2017年にブラッシュアップ!
お金に対する意識が変わると、入ってくる情報が変わり、無駄をなくせます。今、自分が始めなきゃいけないことが見つかると思いますよ」
取材・文/鷺島鈴香、『週刊女性』取材班
森永卓郎(もりなが・たくろう)◎経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。専門はマクロ経済、雇用対策。『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系)、『がっちりマンデー!!』(TBS系)レギュラー。バラエティー番組でも活躍中
山口京子(やまぐち・きょうこ)◎ファイナンシャルプランナー。家計簿から保険、お金を増やす運用まで、女性にやさしいアドバイスに定評が。最新刊に『お金に泣かされないための100の法則』(主婦と生活社)。メディア出演多数
北村庄吾(きたむら・しょうご) ◎社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャルプランナー。年金や医療保険など、社会保険制度問題の評論家としても活躍。近著に『人生を左右するお金のカベ』(日本経済新聞出版社)