香川親子に対する風当たりの強さ
右團次は高嶋屋になるが、息子の右近はあえて自分の育った澤瀉屋で稽古するという。となると、ある問題が勃発しそうなのだ。
「これからは、香川の息子である團子くんが、同じ一門ということで何かと右近くんと比べられてしまうことでしょう。
本人同士は何とも思っていなくても、梨園というところは周囲が何やかんやと言いたがる。実際に'13年には、あるお囃子のお偉方がブログで、名指しこそしないものの、團子とわかる内容で“駄馬”と評する事件がありました。
46歳で歌舞伎界入りした香川親子には、ただでさえ風当たりが強い。今でも“なぜ、ドラマに出るときも中車を名乗らないんだ”と批判する大御所もいますからね」(全国紙記者)
芸能界では成功した香川が歌舞伎という伝統芸能に飛び込んだのは、父が大きくし自分が継げなかった『猿之助』の名跡を息子に継がせるため。'11年の襲名記者会見でも、彼はその決意をはっきりと語っている。
「私の中で140年にわたって続いているその代を、僕自身が生きていて政明(團子)という長男がいて、やらなくていいのか。“この船に乗らなくていいのか”とこの10年、それと彼が生まれたこの7年、ずっと思ってきたことです」
だが、彼が追い求めてきた夢に暗雲が立ち込めている。
「最近、團子くんが歌舞伎から遠ざかっているというのです。どうも、稽古すらしていないという話も漏れてくる。しかも、離婚したので香川の元妻が育てているわけですが、彼女は息子の梨園入りには反対の立場だった。そもそも、離婚の理由は香川が勝手に歌舞伎界入りしたことですからね。そうなると、團子くんが自然と稽古や舞台から距離を置いてしまうのも、しかたがないでしょう」(前出・全国紙記者)
故・坂東三津五郎さんと寿ひずるの長男として生まれた坂東巳之助は、両親の離婚によって歌舞伎から離れた時期もあった。だが、寿が“離婚してもあなたは坂東家の跡取り”と、息子を稽古に通わせ続け、現在は立派な役者に育っている。だが、それはまれなケースだろう。
それだけに、香川の親戚で歌舞伎研究家の喜熨斗勝氏も心配を隠さない。
「歌舞伎の家では父親は芸を教えますが、母親は心のよりどころなんです。そういう意味では、息子を歌舞伎役者にしようとする香川くんにとって、離婚したことは、ある意味つまずいてしまったかもしれない。両親が別れてしまったことは、團子くんがいちばん大変でしょう」
45年間も父・猿翁と息子・香川は断絶していた。恩讐を越えて再会したものの、孫に祖父の名跡を継がせる夢は途絶えてしまうのだろうか─。
そこで、2月上旬。自宅から出てきた香川を直撃取材した。離婚会見後、初めて重い口を開いてくれた。