働くママたちの共感を集めた「保育園落ちた日本死ね!!」から、もうすぐ1年。待機児童は依然、解消されないまま。介護と育児のダブルケアを担う女性、子どもの学費のためパートを掛け持ちする母親も珍しくない。そうした負担が軽くなる法律があれば、誰もが喜んで賛同するだろう。
ところが反対に、女性を追い詰める法案が今の国会へ提出されようとしている。その名も『家庭教育支援法』。聞こえのいい名称とは裏腹に、この法案が掲げる“家庭教育”はトンデモない。
女性や子どもにかかわる問題を数多く手がける打越さく良弁護士が解説する。
「家庭を、国家に貢献する子どもをつくるための人材育成装置とするのが狙い。国に役立つ人、国や郷土を愛する人に育つよう教育すれば国や自治体は手助けしますよ、というものです」
支援法案は、核家族化や地域との関係が希薄になったことで家庭教育の緊急支援が必要だとして、《保護者が子に社会との関わりを自覚させ》るための責任を負っていると強調、さらに《国家や社会の形成者として必要な資質が備わるよう環境を整備する》よう保護者に要求している。
支援といっても、子どもの虐待防止や貧困解消につながるものではないのだ。
「国がこうあるべきとする教育、つまりお国のために役立つ人材を育成していない親は、責任を果たしていないことになるという法律。そのとき、責任を果たしているかどうかを判断するのは国です。家庭の事情やライフスタイルを尊重するのではなく、枠にあてはめ上から目線でコントロールしようとしています」
その国家観、家庭観は、さながら「日本を取り戻す」といったシロモノ。三世代同居の『サザエさん』一家を理想に挙げる保守団体『日本会議』とも通底する。