嫌な経験をしている人ばかりではない

 イラつく側にも理由はあるようだ。ただ、誰もが攻撃的な態度になるわけではない。

「イラッとされるのはしかたないと思います。でも、実際にどうのこうの言ってくる人は変な人。そういう人から子どもを守らなければという意識はある」(30代)

 世の中の目が変わってきたという声もある。

「7歳上の子の育児をしていたときは、もっと寛大だったと思いますよ。今はちょっと子どもが騒いでいるだけで“なんでしつけができていないんだ”という冷たい視線を向けられます」(30代)

 しかし、嫌な経験をしている人ばかりではない。

「嫌な思いはしたことはありませんね。むしろ、ベビーカーで歩いていると人が寄ってきて可愛がってくれますよ」(20代)

「電車内ではベビーカーをたたんで抱っこしています。子どもが起きて泣きだしてしまうと、周囲の目線が気になることもありますが、優しい人が多いですよ」(30代)

 子連れ女性を温かく見守る人も多いのだ。産婦人科医の宋美玄さんは、ベビーカー論争が過熱した背景には昨今のインターネットの普及があるという。

誰もが手軽に発信できるようになって、匿名で掲示板などに書き込めるようになった。過激な意見は少数でも、まるでそれが大多数の声のように映りますからね

 ただ、2児の母である宋さんも不愉快な思いをしたことがある。

「渋谷にある商業施設に行ったときのことです。オープンして間もないころで、思いのほか混んでいました。すると、“子どもが親の都合で連れ回されてかわいそう”と、あえて聞こえるように言われたんです。反応したら負けだと思ったので、無視してそのまま立ち去りました」

 商業施設でトラブルになりやすいのがエレベーター。

「最近ではベビーカー優先のエレベーターもあるのですが、使っていない人たちであふれていることがあるんです。文句を言ったことはありませんが、ちょっと残念ですよね」(宋さん、以下同)

 お寺とは逆のマナー違反も横行しているのだ。子連れママにとっては困ったことだけれど、ベビーカーで出かけなければならないことも多い。

現代は核家族化が進んで、お母さんと子どもが1対1で過ごす時間が圧倒的に多くなっています。外出するときに誰も預かってくれる人がいないなら、一緒に外に出なきゃならないですよね。それに今は、“1か月健診が終わったら外に出ていい”と医者から言われますからね

 子育てママが街に出られないのはおかしなこと。ベビーカーが迷惑に思われない方法はないのだろうか。

ママの側も“子どもを連れてるんだから優遇されて当然”というようなオーラは出さないほうがいいと思いますね。卑屈になる必要はありませんが、 空間を占拠しているのは確かですから。気持ちが伝わるような感じで振る舞えば、怒りの気持ちを覚える人は少ないと思いますよ」 

 淳も番組内で言っていた。

「子どもが国の宝だって言うなら、みんなで大事に育てなきゃ」

 気持ちに余裕があれば子育てママに優しくなれる。